2021 Fiscal Year Annual Research Report
Toxicological significance of metal biogenic nanoparticles
Project/Area Number |
21H04920
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小椋 康光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (40292677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 紀行 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (10376379)
福本 泰典 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (10447310)
田中 佑樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (50824041)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / セレン / 水銀 / リソソーム / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な用途のために化学的に合成されたナノ粒子が、生体や細胞に対してどのような影響を及ぼすかという観点の毒性学的研究、すなわち外来性のナノ粒子の毒性研究は、これまで数多くなされてきた。しかし、毒性が高いとされている水溶性の金属元素が動物細胞に曝露された場合、元素状つまり不溶性のナノ粒子を形成し、生体分子との相互作用を低下させることにより、解毒を図るという機構が動物細胞にも存在することが明らかになりつつある。本来、動物は生活環境に合わせて、環境から曝露される化学物質を代謝し、排泄するという解毒を行っているが、細胞内でナノサイズの不溶性含金属粒子(バイオジェニックナノ粒子)を生成し、必ずしも排泄を伴わない毒性の低減という代謝機構の存在を示唆するという毒性学のパラダイムシフトを目指して、その機構を明らかにしていくことが本研究の目的である。本年度は、セレンと水銀という古くから生体内での拮抗作用が知られていた2つの金属によるバイオジェニックナノ粒子生成の機構の一端を明らかにした。また、その二次曝露の影響についても検討し、成果を得た。 セレンと水銀のin vivoにおける拮抗作用については、その現象自体は古くから知られていたものの、正確な機構については明らかとなっていなかった。本研究において、培養細胞を用いて、セレンと水銀の同時曝露により、リソソーム内でセレンと水銀のバイオジェニックナノ粒子ができることを初めて観察し、報告をした。 セレンと水銀のバイオジェニックナノ粒子は、水銀の曝露量の多い海棲生物で多く観察される。バイオジェニックナノ粒子を一次的に生成する動物においては、その生成は解毒機構を考えられるが、一次生成動物を捕食する動物に対するバイオジェニックナノ粒子の二次的影響については明らかにされていない。その影響についても、本研究で明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セレンと水銀による拮抗作用は、リソソーム内で5 nm程度の1次粒子を生成し、さらに50-100 nmの二次粒子を生成し、リソソーム内に沈着することを見出した。また、セレン化水銀のバイオジェニックナノ粒子の形成は、当初の仮説に反して、細胞内でのセレンの還元にグルタチオンの必要性が高くないことが明らかとなった。そこでグルタチオン以外の細胞内還元因子の探索を行う検討を開始した。引き続き、セレン化水銀のバイオジェニックナノ粒子の生成機構について検討を行っている。また生体内でのナノ粒子の挙動を解析するために、生体内分子とナノ粒子とを効果的に分離し、選択的にナノ粒子を検出するため、Asymmetric Flow Field Flow Fractionation (AF4)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を組合わせた新たな分析法の構築にも着手した。 セレン化水銀のバイオジェニックナノ粒子の二次的影響については、実験動物を用いた評価を行った。現時点では、生体内で解毒のために生成したセレン化水銀のバイオジェニックナノ粒子が、それを捕食した動物に対して二次的な影響すなわち毒性発現を含めた何らかの生物活性を示すことは低いことが明らかとなった。 その他、セレン化水銀のナノ粒子を測定するために必要な高時間分解型のICP-MSの応用など関連する分析法の構築も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
元素状の金属ナノ粒子として生成するために必要な金属イオンを還元する酵素あるいは内因性物質の同定を行う。カチオン型金属イオンのためのReductase A及びオキシアニオン型イオンのためのReductase B、あるいはそれぞれに対応する還元物質Reductant Xの同定を行う。今年度の成果から、グルタチオンやグルタチオン還元酵素の関与は無いことが明らかになっているため、次年度は具体的なターゲットとして、サルフェン硫黄(活性硫黄種)、あるいはスルフィドリル基よりも低いpKaを有するセレノ―ル基(SeH基)を有するセレンタンパク質を、バイオジェニックナノ粒子の還元に必要な因子として想定し、関連する遺伝子発現を調整し、その関与を明らかにする。この際に、単一元素のバイオジェニックナノ粒子として、形成されるテルルという元素に着目する。また複合元素のバイオジェニックナノ粒子であるセレン化水銀については、リソソーム内でのナノ粒子の生成に至る過程で、可溶性のセレン化水銀が細胞内で特定のタンパク質と結合していることが想定できている。そこでこの可溶性のタンパク質因子の同定も計画に含める。 一方、セレン化水銀バイオジェニックナノ粒子の二次曝露による生体影響は小さいことを本年度に示したが、次年度はセレン単独のバイオジェニックナノ粒子がどのような生体影響を及ぼすのか、特にバイオジェニックナノ粒子と化学的に合成したナノ粒子との違いに着目して検討する。
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[Presentation] Elucidation of formation mechanism and toxicological significance of biogenic mercury selenide nanoparticles in human hepatoma cell, HepG22021
Author(s)
Yu-ki Tanaka, Hana Usuzawa, Miyu Yoshida, Kazuhiro Kumagai, Keita Kobayashi, Satoshi Matsuyama, Takato Inoue, Akihiro Matsunaga, Mari Shimura, Jorge Ruiz Encinar, Jos? M. Costa-Fern?ndez, Yasunori Fukumoto, Noriyuki Suzuki and Yasumitsu Ogra
Organizer
Forum 2021 Pharmaceutical Health Sciences・Environmental Toxicology、日韓次世代ポスターセッション
Int'l Joint Research
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