2022 Fiscal Year Annual Research Report
脱細胞化組織機能の解明によるDestination Useデバイス設計指針の獲得
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21H04954
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岸田 晶夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60224929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 剛 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (10393216)
橋本 良秀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40638384)
中村 奈緒子 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (70754878)
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 脱細胞化組織 / 細胞外マトリックス / マトリックス結合型ベシクル / 組織工学 / 埋込型医療デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の寿命が尽きるまで埋植可能(Destination Use: DU)が可能なバイオマテリアルの開発を目的として、生体組織から細胞成分を除去して得られる脱細胞化組織の特性を指標とし、細胞外マトリックス(ECM)の構造的因子および含有されている液性因子の双方について生体機能の解明を行うことでDUバイオマテリアルの設計指針を構築し、人工材料に実装する方法を開発する。本年度は脱細胞化組織からマトリックス結合型ベシクル(MBV)を抽出し、その生物学的評価を行った。低血清濃度下で血管内皮細胞を培養し、MBVを添加したところ通常濃度の血清培養と同程度の増殖性を示すことを明らかにした。またラットの後根神経節にMBVを添加したところ、神経成長因子と同様の活性を観察することができた。さらにラットの下肢神経損傷モデルを作製し、MBVをフィブリンゲルに混合して投与して機能を確認したが、顕著な神経修復は観察されなかった。このことから、MBVは神経を構成する特定の細胞にのみ活性を有することが示唆された。 マクロファージ様細胞をゲノム編集して作製したM1分化時に蛍光を発する組み換え細胞を用いて脱細胞化組織の生体適合性を観察したところ、M1分化が抑制される成果が得られた。昨年と異なる結果であるため、慎重に確認を行った。 人工材料への実装のため、脱細胞化組織の特性を維持したままでゲル化あるいはコーティング素材とする技術について検討した。その結果、高強度のゲルを得るためには、脱細胞化組織を調製する際のプロセスが重要であることが判明し、その理由はコラーゲンの含有量であることを見いだした。コラーゲン含有量を高める脱細胞化プロセスを構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱細胞化組織からのMBVの抽出について条件の最適化を引き続き進めている。種々の組織から様々な条件で抽出を試み、抽出量、粒度分布に再現性がほぼ得られつつある。 細胞を用いたMBVの生物活性試験法は確立できた。MBVの定量についての問題があるため、試料の搬送の問題解決を図っている。MBVの吸着性が予想よりも高いため、容器の低吸着性改質が必要と考えている。ラットを用いた細胞および埋め込み実験により、MBVの生理活性はかなり限定された機能である可能性が分かった。神経だけでなく幹細胞等に対象を広げて、生理活性のスクリーニングを実施予定である。M1分化については人工材料および脱細胞化組織の系統的な評価により、脱細胞化組織の低炎症性を明らかにすることができた。免疫細胞の材料認識についても知見が得られ、新たな研究指針を獲得できた。ゲル化能については、検討項目の増加および種々のプロセスの再確認を行ったところ、脱細胞化組織中のコラーゲン含有量がゲル化に影響していることが分かった。脱細胞化組織の特性を損なわずにコラーゲン含有率を高めるプロセスを検討し、含有率を高めて強く再現性のよい脱細胞化ゲルを得ることが出来た。今後、プロセスの再現性を評価し、生体活性について検討を行う予定である。それにより本研究の進展に欠かせない未知のパラメータの手がかりが得られると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に従事していた博士研究員が東北大学助教として転出したため、移動先の教授と相談して本研究の分担研究者として追加した。東北大学の設備を利用して本研究を遂行することも可能になった。京都大学との検討を進め、エクソソームとMBVの同異性について確認を進める。MBV上に表出されているタンパク質の解析を行い、MBVの本質的理解を進める。また、MBVの生物活性については対象の細胞種を拡大し、その効果を解析する。マクロファージ様細胞のM1分化については、M2分化との比較や経時的変化について検討を行い、生体内埋植時の炎症性と長期の安定性獲得についての情報を得る。また、動物実験による埋植試験により、移植片周囲の細胞の種類の経時的観察を行い、中長期の周辺細胞の機能と低炎症性との関連について検討する。脱細胞化組織のゲル化のプロセスが確定したので、高強度ゲルの特性を調べて論文化とともに知財化について検討する。また、コーティング対象の人工材料について、エレクトロスピニング法または3Dプリント法を用いて、形状について引き続き検討を行う。
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Research Products
(15 results)