2022 Fiscal Year Annual Research Report
in vivo CRISPRスクリーニングの技術確立と生体内細胞増殖機構の解析
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21H04959
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遊佐 宏介 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (00813180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 一成 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (30618020)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | CRISPR-Cas9 / ゲノム編集 / Flp / スクリーニング / T-ALL |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス遺伝学において時空間特異的遺伝子破壊のために一般的に用いられるCre-loxPシステムであるが、ヒト細胞においては予想以上の高い細胞毒性が見られ、本システムによる遺伝子発現制御は困難であった。その代替法として、Creとは異なる配列を認識する同様の部位特異的組換えシステムvCre-vlox及びFlp-FRTを検討した。結果、vCreは毒性を示した一方、Flpは毒性を示さなかったことからFlp-FRTシステムが有効であることがわかった。組換え効率は最大80%程度であったが、スクリーニングは実施可能と判断した。 多発性骨髄腫が骨髄にとどまる機構の重要なものの一つはCXCR4-CXCL12の相互作用であり、in vivoスクリーニングではこの相互作用に関わる因子もヒットすると考えられる。そこで、in vitroケモタキシスアッセイを用いてCXCR4-CXCL12相互作用にかかわる因子をゲノムワイドCRISPRスクリーニングで同定することとした。アッセイにはこの実験系で実績のあるT細胞急性リンパ性白血病細胞(T-ALL)株を用いた。スクリーニングの結果、既知の細胞運動にかかわる因子の他に、クロマチン制御因子を得た。分子メカニズム解析の結果、クロマチン制御因子はT-ALLで重要な転写因子RUNX1のゲノムへの結合に必須であり、クロマチン制御因子の活性を阻害するとRUNX1の下流遺伝子の発現が有意に低下することが明らかとなった。下流遺伝子にはCXCR4があり、その発現が低下することでCXCL12に対するケモタキシス活性が低下することがわかった。RUNX1の下流にはT-ALLの増殖に必須の遺伝子群もあり、これらの遺伝子も発現低下することで抗腫瘍効果が発揮される。このことより、クロマチン制御因子がT-ALLの治療標的となることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cre-loxPシステムの代替法として、Creとは異なる配列を認識する同様の部位特異的組換えシステムvCre-vlox及びFlp-FRTを検討することとし、vCreERT2あるいはFlpERT2をDNA損傷に感受性の高いヒトES細胞に導入し、その細胞毒性を解析した。タモキシフェン誘導後、vCreERT2は細胞毒性を示し高い細胞死が検出されたのに対し、FlpERT2では細胞死は見られなかった。次に組換え効率を測るために、FRT-STOP-FRT-mCherry-Cas9カセットを作製し、内在性遺伝子座(GAPDH座)に導入した。タモキシフェン誘導による組換えで発現してくるmCherryの陽性細胞割合を解析した結果、最大80%の細胞が組換えを起こすことがわかった。これらの組換え細胞でゲノム編集活性があるかどうかをレポーター遺伝子に対するガイドRNA を発現して解析した結果、良好な活性が見られ、システム全体が機能することが明らかとなった。 In vivoで使用するシステム開発と並行して、多発性骨髄腫が骨髄にとどまる機構の一つCXCR4-CXCL12の相互作用に着目したゲノムワイドCRISPRスクリーニングを、in vitro系を用いて実施した。同定された因子の一つクロマチン制御因子の分子メカニズム解析を完了し、転写因子RUNX1のゲノムへの結合、つまり転写活性作用に本クロマチン制御因子が必須であることを明らかとした。このことをまとめた論文を現在投稿中である。白血病治療の新しい標的となることを検証するため、今後、患者由来ゼノグラフトモデルを使ったin vivoでの阻害剤の薬効の検証を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
FlpERT2発現ユニット、FRT-STOP-FRT-Cas9発現ユニットをCre-loxPシステムを使用した時と同様にpiggyBacトランスポゾンに組み込み、骨髄腫細胞あるいは白血病細胞に導入して、DNAの組換えによりゲノム編集が活性化するシステムの構築を目指す。In vitroでのゲノム編集活性の検証を終えたのち、免疫不全マウスに細胞を移植して、in vivoでもゲノム編集を誘導的に行えるかどうか検証を進める。 スクリーニングを行う上で重要なのが、ライブラリーに含まれるガイドRNAの総数に対するカバー率である。移植された細胞においては、その生着細胞数がこのカバー率に大きな影響を及ぼす。そのため、各細胞株の生着率、生着細胞数の検証をバーコーディング技術を用いて実施し、in vivoスクリーニングに適した細胞株の選定を進める。 白血病細胞のin vitroスクリーニングで得られたクロマチン制御因子をモデル因子とし、in vivoで誘導型ゲノム編集を実施した場合の表現型解析を実施する。これはより特異的に標的遺伝子の表現型を解析するだけでなく、スクリーニングを行う際の細胞の回収時期等の判断基準として重要なデータとなる。 新たに白血病の治療標的として同定したクロマチン制御因子に関しては、患者由来ゼノグラフトモデルを使ってin vivoでの阻害剤の薬効の検証を進める。
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[Journal Article] AKT-mTORC1 reactivation is the dominant resistance driver for PI3Kβ/AKT inhibitors in PTEN-null breast cancer and can be overcome by combining with Mcl-1 inhibitors2022
Author(s)
Dunn S, Eberlein C, Yu J, Gris-Oliver A, Ong SH, Yelland U, Cureton N, Staniszewska A, McEwen R, Fox M, Pilling J, Hopcroft P, Coker EA, Jaaks P, Garnett MJ, Isherwood B, Serra V, Davies BR, Barry ST, Lynch JT, Yusa K
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Journal Title
Oncogene
Volume: 41
Pages: 5046~5060
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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