2022 Fiscal Year Annual Research Report
The roles and mechanisms of chromatin memory in the robust responses under flactuating environments
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21H04977
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
工藤 洋 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10291569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角谷 徹仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20332174)
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
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Project Period (FY) |
2021-05-18 – 2026-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / H3K27me3 / 長期環境応答 / エピジェネティクス / ハクサンハタザオ |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン長期記憶の環境応答におけるメカニズムと役割を理解するために、1.長期クロマチン記憶の新規メカニズム、2.新規環境要因で変化する長期クロマチン記憶のターゲット、3.長期クロマチン記憶の生態機能を明らかにすることが目的である。具体的には、① H3K27me3介在型プロモーターの解析による新規メカニズムの解明、② 修飾間のクロストークとDNAトポロジーの役割の解明、③ 温度ミミックをのターゲット解析、④ ウイルスで変化するロマチン記憶の解析、⑤ 長期クロマ チン記憶の温度依存性と生態機能の解明、⑥ 防御における季節ゲーティングの解明、である。 2022年度には、2021年度に引き続き、①②③⑥に重点を置いた。その結果、シロイヌナズナの7つのH3K4メチル化酵素と3つのH3K4脱メチル化酵素の同定が完了し、それぞれがH3K4me1/me2/me3にどのように影響するかを整理した(Oya et al 2022 Nature Communications他)。また、H3K27me3よりもさらに長期の抑制記憶として働くH3K9meと、抑制修飾CpGメチル化とのつながりを遺伝学的に示した(To et al 2022 Nature Communications)。さらに、ハクサンハタザオから得られた配列を用いて、任意の遺伝子に長期環境応答を付与する実験系を確立した。「環境要因」では、温度ミミックを人工合成し、植物の温度刺激を代替することを明らかにした。「生態機能」では、ヒストン修飾を介して、病虫害に対する誘導防御がシャットダウンされる新しい機構が存在することを示した。また、関連する英文の総説(Nishio & Kudoh 2023 Current Opinion in Genetics & Development)と日本語の解説(本庄・工藤 2023a,b)を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①~⑥の計画のうち、これまでの2年間の研究期間において、①②③⑥を中心的に進め、期待通りの成果が出ている。③⑤については準備が進んだ。①「H3K27me3介在型プロモーターの解析による新規メカニズムの解明」については、長期的記憶を司るプロモーターおよび下流の遺伝子上において長期の低温に応答したH3K27メチル化が変化することを確認し、任意の遺伝子に長期低温応答性を付与できることを示した。現在論文投稿準備中である。②「修飾間のクロストークとDNAトポロジーの役割の解明」については、シロイヌナズナの7つのH3K4メチル化酵素と3つのH3K4脱メチル化酵素を同定し、それぞれがH3K4me1/me2/me3にどのように影響するかを整理した(Oya et al 2022 Nature Communications 他)。さらに、より長期の抑制記憶として働くH3K9メチル化とCpG DNAメチル化とのつながりを遺伝学的に示した(To et al 2022 Nature Communications)。 ③「温度ミミックのターゲット解析」については、予定通り合成したペプチドを用いて植物に温度を勘違いさせることに成功した。⑥「防御における季節ゲーティングの実証と生態機能の解明」については、季節ゲーティングを遺伝子発現レベルで明らかにした。また、 ④「ウイルスで変化するクロマチン記憶の解析」と⑤「長期クロマチン記憶の温度依存性と生態機能の解明」については、前者では遺伝子発現とヒストン修飾の解析を順調に進めており、後者では葉の老化応答が冬季にシャットダウンすることを見出したので、クロマチン記憶の生態機能の解明が予定の範囲を超えて進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマチン記憶における修飾間クロストークの役割を解明するために、東京大学ではエピゲノム形成に関与する因子の変異体を用いた解析に加えて、1細胞またはロングリード解析を進める。京都大学では分子遺伝学的実験、温度ストレス・ウイルス感染実験に加えて引き続き自然集団での研究を実施する。計画①「H3K27me3介在型プロモーターの解析による新規メカニズムの解明」については、H3K27メチル化レベルが低下するポリコーム変異体背景でのH3K27me3介在型プロモーターの働きを評価する。また、当該プロモーターを持つ内在遺伝子の機能について解析する。計画②「修飾間のクロストークの解明」については、H3K4に加えH3K27に影響する変異体を用い、これらの修飾の相互依存性を整理する。計画③「温度ミミックのターゲット解析」については、温度ミミックペプチドの機能を明らかにするとともに、ターゲットの遺伝子発現変化とペプチド濃度との関係を解析する。計画④「ウイルスで変化する長期クロマチン記憶のターゲット解析」については、ハクサンハタザオ自然集団―カブモザイクウイルス持続感染系において、感染株と非感染株の間でヒストン修飾を比較し、感染によりH3K27me3の蓄積が変化する遺伝子を特定し、発現との関係を明らかにする。計画⑤「長期クロマチン記憶の温度依存性と生態機能の解明」については、葉の老化応答の季節変化とヒストン修飾との関係を解析できる野外データを取得し、冬季における老化のスイッチオフ機構におけるクロマチン記憶について解析する。計画⑥「防御における季節ゲーティングの実証と生態機能の解明」については、みどりの香りのゲーティング現象において、遺伝子発現調節とH3K27メチル化蓄積との間にある両方向の調節について解析を進める。
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Research Products
(57 results)