2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Novel Taste Sensor Using Allostery
Project/Area Number |
21H05006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
都甲 潔 九州大学, 五感応用デバイス研究開発センター, 特任教授 (50136529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
重村 憲徳 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40336079)
内田 享弘 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70203536)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Keywords | 味覚センサ / アロステリー / 味覚受容体 / 非荷電苦味物質 / 広域選択性 / NMR法 |
Outline of Annual Research Achievements |
非破壊での状態分析が可能なNMR法(対象核種:1H)を用いて溶液中のカフェインと2,6-DHBA(水酸基を有する芳香族カルボン酸)の分子間相互作用の解析を行った.その結果,カフェインは2,6-DHBAとスタッキングし,水素結合およびπ電子相互作用を介して安定な会合体を形成していることが分かった.つまり,カフェインが2,6-DHBAの水酸基に水素結合し,かつ互いにスタッキングし,結果,水溶液中のプロトンがカルボキシ基に結合して電荷が正値側に変化し,膜電位が正値応答するというメカニズムが明らかになった.この成果は非荷電味物質をアロステリーで検知する大きな糸口になるものである. 塩味エンハンス効果を検知する受容膜について部分荷電または完全解離脂質から成る2種類の膜の電気化学的測定を行い,その特性の違いを明らかにした.成果は味覚センサ受容膜の性能改善や感度調整への活用が期待される.甘味受容膜の応答メカニズムも明らかにした. 甘味受容体の活性化メカニズムを明らかにするために,甘味受容体サブユニットTAS1R3の膜貫通領域とモジュレーター複合体の分子動力学シミュレーションを行った.その結果,甘味抑制物質との相互作用は,分子内アロステリーにより,細胞内側の膜貫膜貫通ヘリックス3-6間に形成されるイオニックロックを安定化させる一方で,人工甘味料との相互作用はこのロックを切断することが予測された. 上市されている2剤合剤間の苦味抑制メカニズムを,味覚センサとNMR法を組み合わせて明らかにした.またhTAS2R14のアゴニストであるジフェンヒドラミンに及ぼすうま味アミノ酸の苦味抑制を味覚センサにて定量的に評価した.現在hTAS2R14を精製後,ナノディスク化し,分子内電荷が異なる薬物に対する苦味抑制物質探索が可能なシステムを構築中である. 以上の成果は4つのグループが協力して成し遂げたものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を始める切っ掛けとなった実験事実は,2,6-DHBAのような水酸基を有する芳香族カルボン酸(以下HBA)で脂質膜を表面修飾すると,カフェインやテオブロミン等の非荷電苦味物質に正値電位応答が現れるという事実であった.その際,HBAの水酸基とカルボキシ基の隣接数が2,1,0に従い,応答が50 mV,20 mV,数mVと応答の大小と有無が生じ,合わせて酸解離定数pKaが順に高くなる.また低pKaのHBAでは中性pHで分子内水素結合が生じているという知見があった.さらなる実験事実として,高アルカリ側で測定を行うと応答は見られない.これらの事実と知見を総合して立てた予測が,HBAには分子内水素結合が存在しており,カフェイン添加によりカフェインがHBAの水酸基と水素結合をし,分子内水素結合が外れ,溶液中のプロトンが戻り,カルボキシ基と結合した結果,受容膜の荷電密度が正値側へ移動し,応答電位が現れるというメカニズムであった. 今回のNMR法による結果はその予測を裏付けるものでもあったし,両者がスタッキングして会合体を形成するというさらなる知見を得ることができた.合わせて,味覚センサのみを用いた実験からも,無味の溶液での応答電位(基準状態)のカフェイン応答への貢献の詳細も得ることができた.本研究を始めた1年前は,これほど短期にメカニズムを解明できるとは予測しておらず,この成功は今後の研究開発を加速するものである. 合わせて論文発表も6件と順調に行った.以上から,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進んでいるため,当初予定を継続する.まず重村G(九州大学):生体受容メカニズムの味覚センサへの設計・応用.R3年度購入したマルチモードプレートリーダーなどを用い,次の3つの研究課題:①生体甘味受容体の構造機能解析,②苦味受容体の構造機能解析を引き続き行い,さらに③味覚修飾物質の作用メカニズム解明に取り組む. 都甲G(九州大学):アロステリーを利用した味覚センサの研究開発.①非荷電苦味物質の検知:巫Gとも協力してHBA以外の修飾物質を検討し,高感度化を図る.②糖類の検知:現味覚センサ受容膜の糖に対する感度と選択性が十分ではないため,他の修飾材料や受容膜の検討を行う.③塩味エンハンス効果の検知:R3年度明らかにした脂質膜のイオン選択性の違いの結果を基にして本効果の検知に取り組む.④うま味相乗効果の検知:重村Gの生理学的知見と巫Gの計測学ノウハウを採り入れ,新たな受容膜の開発を行う. 内田G (武庫川女子大学):味覚受容膜の創薬応用.R3年度に続き,医療用医薬品原末を対象とし,苦味センサの開発支援を行う.①非荷電苦味物質の探索と物性の評価,②官能試験による非荷電苦味物質の苦味評価,③苦味受容体TAS2R14を用いた検証と応用,④苦味抑制剤探索システムの構築を行う.得られた知見は都甲Gの研究に反映させる. 松井G(九州大学):リガンドと味覚受容膜間に働く分子間相互作用の状態解析.都甲Gの提供する新たな修飾物質とカフェインとの相互作用探索,ならびに機能性ペプチドへの応用を図る. 巫G(福岡工業大学):主としてうま味相乗効果と非荷電苦味物質の検知について,都甲Gと強力な連携体制を敷き,受容膜開発の加速を促す. 以上,R3年度に続き,上記5つのグループで密に連携し,基礎研究と応用研究開発を互いにフィードバックさせながら,新規味覚センサの創出を行う.
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Research Products
(15 results)