2022 Fiscal Year Annual Research Report
Biohybrid Sensor Engineering for Ultra-Sensitive Detection
Project/Area Number |
21H05013
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 昌治 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90343110)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 悠加 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (30784508)
大崎 寿久 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 人工細胞膜システムグループ, サブリーダー (50533650)
|
Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
|
Keywords | マイクロ・ナノデバイス / ナノバイオ / バイオセンサー / 生体膜および受容体 / ハイブリッド・スマート・生体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人工物を凌駕する感度・選択性・シグナル増幅能を有する細胞を生体素子としてデバイス内で直接用いたバイオハイブリッドセンサの工学基盤を確立することを目的とする。所望の嗅覚受容体が発現した細胞(センサ細胞)を用いて「生物のセンシング能を直接デバイス内で活用するための設計論はなにか」ということを学術的な問いに設定し、以下の3項目の検討を行うことで、バイオハイブリッドセンサに関する学術基盤の確立を目指す。 (1) 複数のセンサ細胞による細胞アレイの構築法および保存搬送技術を確立する。 (2) 細胞と人工物を繋ぎ、効率的に信号を検出するための計測技術を確立する。 (3) バイオハイブリッドセンサの応用探索と概念実証を行う。 2022年度の研究実績として、項目1については、各センサ細胞に発現している受容体の位置を制御してアレイ状に配置するデバイス設計論を確立することを目指して検討を行った。さらに、様々な種類の細胞をセンサ素子として使用するための基礎的検討を行った。また項目2については、細胞が本来もつセンシング特性を発揮するための、シグナル抽出技術と匂い計測デバイス技術について検討した。研究成果として、査読付き論文3報、国際会議を含む学会発表26件、図書2件、特許出願2件を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は本研究の目的において示した3項目のうち、(1)アレイ構築および(2)計測技術についてそれぞれ研究を実施した。 1. 【アレイ構築】(東京大学) 本項目ではバイオハイブリッドセンサの根幹をなすセンサ細胞チップの構築方法を検討した。まずは数種類の細胞に対し、有用な物質認識能をもつ嗅覚受容体の遺伝子を発現させることで計測技術と組み合わせて工学利用するセンサ細胞の作製を行った。様々な細胞を用いることでその細胞特有の機能を活かしつつセンサ細胞として利用することが可能となった。光造形法により作製した鋳型を用いることで直径200μm、10行10列の細胞アレイ作製に成功した。またマイクロ電極アレイを用いて神経細胞による活動電位変化を観測できることを見出した。これはセンサ素子として使用可能な細胞種を広げる成果である。更に皮膚組織を任意の形に構築する技術を確立した(Matter誌掲載)。これにより気液界面でセンサ細胞を長期的に維持できると期待される。 2. 【計測技術】(神奈川県立産技総研) 本項目では、細胞のもつ信号増幅能をロスなく抽出するため、光学・電気計測技術の研究・比較を行った。匂い物質は揮発性有機化合物であり一般に疎水性で水溶液への溶解度が低い。匂いを感度・応答性高く検出するには、センサ細胞が存在する水溶液中へ匂い物質を効率良く溶解させ届けるためのデバイス技術が必要となる。そこで、シミュレーションにより水溶液中の対流が匂い物質の溶解に強い影響を及ぼすことを明らかにした。センサ細胞アレイを用いて概念実証や応用探索を行うためには計測装置開発と同時にデータ解析技術が不可欠である。機械学習やノイズ除去技術により匂い物質の結合により受容体から発せられるシグナルを0,1の矩形パルス信号に変換し、その状態から匂い物質濃度を即時に導出するプログラムを開発した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本研究の目的において示した3項目のうち、(1)アレイ構築および(2)計測技術についてそれぞれ研究を実施するとともに、(3)応用探索についても開始する。 【アレイ構築】(東京大学)本項目では複数のセンサ細胞をアレイ化し、異なる受容体を発現しているセンサ細胞の位置を制御してアレイ状に配置するデバイス設計論を確立する。2023年度は昨年度に引き続き細胞の生存を保ったままデバイス化し、凍結保存を行うことを念頭に細胞周辺材料の組成や硬さ、温度や凍結時の物性変化などを念頭に高分子設計論の視点から検討を行う。更に今までの知見を総合し、100スポットからなるアレイの構築に向けた検討を開始する。また凍結保存についての物性評価を本格的に開始し、この結果アレイの作製にフィードバックすることでアレイ構築を総合的に進めていく。 【計測技術】(神奈川県立産技総研)本項目では、細胞アレイを搭載し人工物上で嗅覚受容体の機能発現を実現するための計測技術の学術基盤を確立する。2023年度は、センサ細胞アレイと計測技術を統合したバイオハイブリッドセンサの構築に向けた計測システムの研究を開始する。光学的・電気的計測技術によりセンサ細胞から得られるシグナルの定量性・誤差に関して検出・解析の基盤研究を継続するとともに、複数の匂い物質に対するセンサの応答特性についても研究を行う。また、センサ細胞アレイを搭載するための計測器の作製を開始し、シグナル情報処理についても併せて検討を行う。 【応用探索】(東京大学・神奈川県立産技総研)本項目では、構築するバイオハイブリッドセンサのベンチマーキングを行うとともに、有用物質に対してデータを収集・実証していくことによりバイオハイブリッドセンサの応用探索を行う。2023年度は、センサ性能のベンチマークをとるためデータ収集を開始する。
|