2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new catalysts and precise synthetic reactions directed for peptide drug synthesis
Project/Area Number |
21H05026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸岡 啓二 京都大学, 薬学研究科, 研究員(特任教授) (20135304)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Keywords | ペプチド合成 / かさ高いアミノ酸 / 超原子価ヨウ素 / アミノ化合物 / フッ化アシル / ペプチド開裂反応 / ベンジルラジカル / カチオン性DABCO型触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチド鎖の効率的な伸長やかさ高いアミノ酸との縮合反応に有効な新規ペプチド合成手法を開発するため、エステル残基に潜在的な活性化基を導入したカルボン酸エステルを用い、適切な活性化剤の有効性について検討した。最初にフェノール基を有するエステル類を合成し、超原子価ヨウ素反応剤で活性化した。その後、アミノ化合物を加えることにより相当するアミドが得られたものの、かさ高いアミノ化合物の場合、収率が大幅に低下した。そこで、超原子価ヨウ素反応剤で活性化した後、フッ化水素・ピリジンで処理することにより、高活性なフッ化アシル中間体が生成した。この中間体は、かさ高いアミノ化合物とも円滑に反応することを見出した。さらに反応条件を詳細に検討し、これらの知見を基にアミノ酸エステル類への応用も試みた。また、アミド結合の選択的活性化に基づく選択的ペプチド開裂反応の開発を目指して、アミド類の窒素置換基上にベンジル基を導入し、ベンジルラジカルを発生させることによるアミド類の開裂条件を詳細に検討した。最初は簡単な構造のアミド類を用い、ベンジルラジカルを用いる第2級アミドのN-ベンジル化が銅触媒で円滑に進行することを見出した。一方、アミノ酸誘導体の水素引き抜き反応において、ラジカル反応の優位性を示すため、独自の分子設計に基づくカチオン性DABCO型触媒を活用し、光レドックス触媒との協働作用によって高活性ラジカル種を系中発生させることで、位置選択的な水素引き抜きを起点とするC-H官能基化反応の開発を行った。特に、アルコールやアミン等のα位選択的な水素引き抜きと続く官能基化により、様々な誘導体に導くことができた。さらに、銅や鉄触媒を用いるアルキルシリル・パーオキシドのラジカル開裂反応を伴うアルキルラジカル種の発生とその選択的な官能基化反応に取り組み、幾つかの新規合成反応を開発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度に当たり、実験室整備のためのドラフトの新規導入や各種の機器の購入などを行った。すなわち、分光蛍光光度計、高速液体クロマトグラフ装置、質量分析計ターボポンプの交換、極低温反応機、真空ポンプ、エバポレーターと真空コントローラー、デジタル真空計、冷却水循環装置などを新たに購入するとともに、真空ラインの配管を行うことによって、実験の迅速化に努めた。これにより、ペプチド医薬合成を指向する新規な触媒・精密合成反応の開発を目指して、(1)アミノ酸エステル類の選択的活性化に基づく新規アミド縮合反応の開発、(2)アミド結合の選択的活性化に基づく選択的ペプチド開裂反応の開発、(3)不活性C-H基の選択的ラジカル活性化に基づく新規官能基化反応の開発、および(4) 遷移金属触媒を用いるアルキルシリル・パーオキシドのラジカル開裂反応を伴うアルキルラジカル種の発生とその選択的な官能基化反応の開発の4項目に分けて、研究を進めた。各種機器の導入や新しい実験室のセットアップに数ヶ月を要したため、初年度の研究期間は約半年間になったものの、以下の成果が得られた。すなわち、エステル残基に潜在的な活性化基として、p-ヒドロキシフェニル基を導入したカルボン酸エステルやアミノ酸エステルを合成し、活性化触媒としての超原子価ヨウ素反応剤の有効性を検討することにより、ペプチド鎖の効率的な伸長やかさ高いアミノ酸との縮合反応に有効な新規ペプチド合成手法を開発できた。また、アミド類のベンジルラジカル発生によるベンジル基の新規導入法と続く新規活性化に基づいた開裂反応の開発や、独自の分子設計に基づく有機ラジカル触媒を考案し、光レドックス触媒との協働作用によって高活性ラジカル種を系中発生させることで、位置選択的な水素引き抜きを起点とする新規C-H官能基化反応が開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
アミノ酸やアミノ酸ヒドロキシエステル類の活性化に基づく新規アミド縮合反応の開発研究においては、既にフェノール基を有するエステル類を合成し、超原子価ヨウ素反応剤で活性化した後、フッ化水素・ピリジンで処理することにより高活性なフッ化アシル中間体を得ている。この際、超原子価ヨウ素剤は当量必要なため、今後は、触媒量による活性化を試みる。一方、潜在的な活性化基としてヒドロキシアルキル基を導入したカルボン酸エステルを用い、適切なルイス酸触媒による活性化の有効性を検討する。反応条件を詳細に検討すると共に、アミノ酸やアミノ酸エステル類への応用も試み、新規ペプチド合成へと高めて行く。一方、選択的ペプチド開裂反応の開発研究においては、ベンジルラジカルを用いて、第2級アミド類の窒素原子上にベンジル基を選択的に導入できる条件を確立する。続いて、このベンジル基を選択的に活性化することによるアミド類の炭素-窒素結合の開裂条件を詳細に検討する。最初は簡単な構造のアミド類を用い、続いてペプチド内のアミド基の選択的開裂などに応用したい。また、不活性C-H基の選択的ラジカル活性化に基づく新規官能基化反応の開発研究においては、既に当研究室で開発したカチオン性DABCO型触媒を活用し、光駆動型水素原子移動による位置選択的なC-H官能基化反応を試みる。特に、アルコールやアミン等のα位選択的な水素引き抜きと続くイミノエステル類へのラジカル付加により、高度に官能基化されたアミノ酸誘導体の迅速合成に取り組む。さらに、セリンおよびリジン等を含むペプチドを基質として同様の反応を行うことで、位置選択的なペプチド修飾法の開発を目指したい。また、その他のラジカル反応の開発研究では、各種の遷移金属触媒を用いるアルキルシリル・パーオキシドのラジカル開裂反応を伴う新規な選択的官能基化反応の開発にも取り組みたい。
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