2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the fundamental mechanism of platelet biogenesis and its medical application
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21H05047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江藤 浩之 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (50286986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 直志 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点准教授 (10447956)
中村 壮 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点講師 (50769833)
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70345031)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Keywords | 血小板 / 乱流 / バイオリアクター / iPS細胞 / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨核球細胞膜表面に見出される繊毛構造体が“乱流センサー”であるとする当初の強い仮説はそれを支持する結果が得られず、静置条件の物理刺激がない巨核球での観察では、典型的なcilia構造とは異なる微絨毛やフィロポディアのような細胞突起構造が存在し、cilia構造保持や微絨毛自体から分泌されるヘッジホッグシグナルの血小板産生への重要性を確認した。また、細胞膜の曲率制御分子BARドメインタンパクがimMKCLのフィロポディア突起の先端部に集積していることを免疫電子顕微鏡法で確認した。その後、上記の細胞突起構造は、細胞外小胞(Extracellular vesicle: EV)として放出され、放出EVはミトコンドリア関連タンパク質を含有していると判明した。このEV放出を通じたミトコンドリア排出機構に関し、ミトコンドリアの機能維持に関わるミトコンドリア特異的分子として知られているタンパク質が、血小板放出のタイミングでは成熟巨核球の細胞膜に移動し、脂質二重膜構造体の構造変化に関与する可能性が得られた。次に、巨核球細胞膜が切断されて発生する血小板産生時の膜切断機構に関し、切断活性を示す新たな候補分子を同定できた。以上の一連の分子機構を担う候補分子の発見に伴い、これらを標的にした検証実験が開始された。 さらに、乱流刺激自体が、ミトコンドリアの巨核球細胞質内の正常な分布にとって必要なメアニズムであり、その活性が血管内皮フォンウィルブランド因子受容体であるGPIb alpha (CD42b)発現を制御していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奈良チームは 計画書にて提案したBARドメインIRSp53に関し、その機能評価を推進した。ファゴサイトーシスに関与するGAS7の細胞集合メカニズムが、アクチン重合関連分子WASP, Nck, WISH/NCKIPSD, 低分子GTPase Cdc42が、Fc gamma RII受容体下流で分子集合している新規メカニズムを見出した(Science Advance)。これらのタンパク質群はIRSp53の集合機構にも関与した。他方、IRSp53に依存したEVの解析も実施し、integrin alpha-6/beta1を特異的に含み、 integrinのEVへの局在化にIRSp53のI-BARドメインが前提条件であることが示唆される。ミトコンドリア機能に関わることが知られている新規タンパク質は、巨核球の成熟過程で細胞膜へ移動する過程に関与する可能性を想定して新たな検証を開始するなど、進捗状況として予定以上に解明ができた。奈良チームでは、IRSp53依存性の細胞突起形成の亢進が細胞接着依存的な機構として機能する意味についても発表した(Adv Sci, 2023)。 京都チームは、巨核球の細胞膜画分を調整し、質量分析技術を用いた巨核球成熟時の膜画分含有変動タンパク質の解析を実施した。その結果、Emillin1 (extracellular matrix glycoprotein)、MIM (I-BARドメインタンパク質)、PTGS1 (シクロオキシゲナーゼCox-1)、DLK1 (Notch受容体)、SerpinH1(セリンプロテアーゼインヒビター)を見出した。一方、IRSp53は恒常的に細胞膜に局在することを確認しており、これらの候補分子が乱流刺激でどの様な分布状況に変化を起こすかの検証を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
乱流センシングの解明に関しては、ミトコンドリア応答メカニズム、イオンの制御の観点を含めて進め、ミトコンドリアとマイトファジー機構の関与、ミトコンドリア活性と血小板品質、チュブリン構造の減弱化とHDACファミリーなどの検証とメカニズム解明を行う。 さらに、巨核球から血小板が産生される際の脂質膜再構成と切断機構の解明は、関与候補BARドメインタンパク質の改変imMKCLの作製、乱流刺激後に脂質膜集積において変動したタンパク質の個別解析、M16エンドペプチダーゼの脂質膜管形成や脂質 EV形成に関する確認検証、などを行う。血小板製造に応用した新規の培養槽の開発では、新規判明因子がうまく設定できない50L縦型乱流刺激型血小板製造培養槽の問題点を明確化して解決策を見出し、灌流様式による新設計培養に関する設計とそのプロトタイプの作製を開始する。
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