2022 Fiscal Year Annual Research Report
Multilevel mechanisms of the neural network restoration under the neurological disorders
Project/Area Number |
21H05049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 俊英 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10301269)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Keywords | 神経科学 / 神経回路 / 中枢神経 / 免疫制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては生体システム―神経連関に関する新たな知見を得ることができた。免疫細胞の一つであるマクロファージが中枢神経系に浸潤してRGMaを介するシグナルを受け取ることで、別の免疫細胞である好中球を呼び寄せて炎症をさらに加速させていることを見出した。脳梗塞後の急性期に浸潤する好中球が梗塞巣を拡大させることを2光子顕微鏡により観察した。好中球の集積がP-selectinに依存すること、また好中球が他の免疫系細胞の浸潤を誘導することを見出し、好中球が組織障害のトリガーとして働くことを示唆した。パーキンソンモデルマウスにおいて、RGMaがミクログリアの集積を促進することで、黒質ニューロンの細胞死を惹起することを見出した。核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging, MRI)を用いた自己免疫性脊髄炎マウスの病態の経時的評価により、抗RGMa抗体が強力な血液脊髄関門の修復促進作用を示すことを見出した。この修復促進作用が、その後の神経症状の回復に寄与することが示唆された。上記の知見は、当初の想定を超えた大規模な生体システムの連関が神経回路の修復および破壊に貢献することを示すものである。また、神経回路の修復過程には神経系以外の生体システムが重要な役割を演じているという新たなコンセプトを確立するとともに、その全体像の解明を順調に進めることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は免疫系や脈管系が神経回路にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目標としていたが、本研究期間において、当初は想定していなかった幅広い臓器が神経回路の修復と形成を制御していることを明らかにし、さらに老化との関連も明らかにすることで、順調に研究を進捗させることができた。神経回路の障害と修復という現象にフォーカスを絞って研究を進めてきたが、その現象に関わる臓器群は非常に多彩であり、当初の想定よりも大きな研究領域に成長しつつある。また生体システムと神経系の双方向性連関のメカニズムの一部を解明できたこと、血液脳(脊髄)関門が神経障害に重要な役割を有することの発見、病態下で出現する新規の細胞群の同定、ヒト特異的miRNAが神経変性疾患の病態制御に関わることの発見また神経変性疾患と生体システムの連関を見いだすことができたことが特筆すべき成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に重要な知見のみにフォーカスを絞り込んで研究を進めていく必要があると考える。以下の2点を重点事項として捉えている。 1.新たな概念の構築に繋がるような発見を深める。 2.中枢神経障害による神経障害を改善する治療法開発に繋がりうる基礎的知見に注力する。
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Research Products
(11 results)