2021 Fiscal Year Annual Research Report
Behavioral and neural basis of generation process of consciousness: approach from psychology of learning and computational modeling
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21J00063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松井 大 北海道大学, 人間知・脳・AI研究教育センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | マーモセット / カルシウムイメージング / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の到達目標は、マーモセットの訓練、および実験の準備を行うことにあった。これらの点において、本年度は大きく分けて二つの活動を実行した。第一に、マーモセット三頭について訓練を行った。本研究課題の実験では、マーモセットは身体を固定された状態で課題に取り組む必要がある。その際、飼育用ケージから実験室に連れて行き、実験スペース内で自発的に入っていくように訓練されていることが、動物にかかるストレスの観点から望ましい(この訓練を「チェアトレーニング」という)。そこで、当該の三個体についてチェアトレーニングを施し、実験に用いる準備ができた。第二に、実験の準備としてマーモセットチェアの作成、および実験スペースの整備を行い、テストをおこなった。さらに、本特別研究員の所属する研究室は、もともと視覚実験を主な実験課題であったため、条件づけ実験のような報酬を用いる課題のセットアップがなされていなかった。そこで、本年度は報酬ポンプや、その際の反応を記録するセンサー類を準備し、学習実験が行えるように実験環境を整備した。 加えて、本来は次年度予定であったカルシウムイメージングの記録を前倒しで遂行し、神経活動記録に成功した。カルシウムイメージングとは、蛍光タンパクをウィルスによる導入を通じて神経細胞に発現させ、その発光を脳内に埋め込んだレンズによって観察する神経活動記録の一種である。さらに、当該個体について、視覚的なミスマッチ反応を記録する「オドボール課題」を用いた実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、本年度より報酬学習に関連する行動実験を開始するはずであったが、提案課題とほぼ同じ内容の課題が採用直後に出版されたため、実験の構想をやや修正する必要が出てしまった。そのため、行動実験については、本年度の進捗はマーモセットの予備訓練が完遂したところまでに留まる。また、実験の準備については、実験室の整備は概ね完了し、条件づけ学習の実験系を指導する準備ができたといえる。 神経活動記録についてはカルシウムイメージングを前倒しで開始することができた。特に、両側の頭頂葉から神経活動記録に成功し、視覚刺激を用いた実験を開始することに成功した。実験には視覚性のオドボール課題という手続きを用いて、「予測に反する」刺激が提示された際の神経活動を記録することができた。また、本年度は理化学研究所との共同研究を行った。具体的には、本年度実施したオドボール課題中の脳活動を皮質脳波計を用いて記録した。本特別研究員はデータ分析を担当し、現在、論文として準備中である。 さらに、本年度はドイツのルール大学との共同研究を実施し、三本の論文を出版することができた(うち一本は共同筆頭著者)。加えて、本特別研究員の単著で実験心理学におけるデータの計測とモデル化についての現状と展望を述べた総説論文を書き、出版するに至った。以上を総合的に鑑みて、本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度目指すべきマイルストーンは、行動実験を開始し、課題中の神経活動記録を行うことである。前年度の時点で、前述の通り、実験系の準備は概ね完了している。そこで、年度が始まり次第速やかに行動実験に供するための手術(頭部に固定具を取り付ける手術)を行い、行動実験を開始できるようにする。その後、報酬学習(古典的条件づけ)の実験にはいくつか実験者が決めるべきパラメータがある。最初の動物では、そのパラメータを探索し、信頼できる学習実験の系を完成させる。その後、随時行動実験の訓練を施し、カルシウムイメージングによる神経活動記録を実施する。 加えて、前年度より開始した視覚的ミスマッチ反応については、本年度も継続して記録を行う。現在、一頭のマーモセットに対して通常のデータを取り切ったのに加えて、ケタミン注射の統合失調症モデルのデータを蓄積している最中である。今後、カルシウムイメージングの手術を順次行い、十分にデータが取れたと判断できた段階で、論文化に取り掛かる予定である。こちらについては、2022年度内にデータを取り切り、論文化に向けて動き始めるところまで到達したい。皮質脳波の研究については、既にデータは取り切っているため、2022年度中に論文を完成させ、学術誌に投稿することを目標とする。
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