2021 Fiscal Year Annual Research Report
Skeletal muscle epigenetic adaptation for hypoxic training
Project/Area Number |
21J00736
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
土橋 祥平 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素トレーニング / 骨格筋 / エピジェネティクス / ヒストン脱アセチル化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,低酸素環境下で実施するトレーニング (低酸素トレーニング) がパフォーマンスの向上や健康増進効果の促進に貢献する運動プログラムとして注目されているが,これら有益な適応を司る分子機序についてはほとんど解明されていない。本研究は,低酸素トレーニングによる骨格筋の相乗的な運動効果獲得のメカニズムに,エピジェネティクス修飾が関与するという仮説について, 組織および分子レベルでの検討を行うことを目的としている。 研究初年度の令和3年度はラットを対象に酸素濃度14.5%の常圧低酸素環境下で高強度間欠的トレーニング (HIIT) を6週間実施した際の腓腹筋のミトコンドリア関連タンパク質の発現レベルと,これらの適応を引き出す調節機構の一つとして遺伝子発現を抑制するヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC5) の核外移行が関与しているかどうか検討を行った。その結果,常圧低酸素環境下でのHIITはミトコンドリアの量的および質的な制御に関わるタンパク質発現を増大させることで骨格筋の有益な適応を引き出している可能性が示唆された。一方HDAC5の核外移行を裏付けるデータは得られなかった。しかしながら,単回の運動による遺伝子発現の増大は一過性に上昇し,その後安静レベルに戻ることを考慮すると,HDAC5の局在変化も急性的に生じていた可能性は否定できない。今後は一過性の低酸素トレーニングを実施し,骨格筋の適応を促す遺伝子発現が増大しているタイミングにおけるHDAC5の局在や他のエピジェネティクス修飾に関わるタンパク質発現発現や遺伝子発現調節機構についても検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットを対象にした低酸素環境下の高強度間欠的トレーニング(HIIT)の実施により,下肢骨格筋のミトコンドリアの量的質的な制御に関わるタンパク質の発現レベルが常酸素環境下のHIITよりも増大することが明らかとなった。この点は既報にはない新たな発見であり,未だ不明な部分の多い低酸素トレーニングによる有益な生体適応メカニズムの一端を解明できたものと考えている。一方で,これらの適応メカニズムを司るエピジェネティクス機構に関わる因子についてはHDACの局在変化からは明らかに出来なかった。そのため,エピジェネティクス解析による詳細な分子メカニズムの解明については今後の課題であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究では、常酸素環境下でのHIITがHDAC5を核外に移行させ,核内のHDAC5が減少している状態を長期的に保持させることとで骨格筋の有益な適応が引き出されるものと仮説を立て,最終トレーニング終了48時間後の安静状態における腓腹筋のHDAC5の局在変化を検討したが,この仮説を実証するデータは得られなかった。しかしながら,各トレーニングセッションにおけるHDAC5の急性的な局在変化に伴う遺伝子発現の亢進が,骨格筋の有益な適応を促進していた可能性も考えられる。そこで,まずは一過性の低酸素トレーニングを実施し,その際の骨格筋の遺伝子発現とHDAC5の局在変化に関わる因子の評価を行う。この検討により,低酸素トレーニングによる適応獲得に関与する候補因子を明らかにできた場合には,その候補因子を薬剤等で阻害した上で低酸素トレーニング実験を行って骨格筋の適応を評価することで,低酸素トレーニングの効果を引き出す新たな分子基盤を構築する。
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