2021 Fiscal Year Annual Research Report
Identify the main pathway of microglia polarization by trans-omics analysis, and create manipulating technics
Project/Area Number |
21J01116
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
聶 翔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ミクログリア / 極性化 / トランスオミクス / オミクス / うつ病 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の免疫担当細胞として知られるミクログリアは、血液中の免疫細胞であるマクロファージと同様に、刺激に応じて異なる極性を示す。例えば、リポ多糖(LPS)による刺激は炎症性反応を惹起するM1マクロファージを誘導し、IL-4やIL-13と呼ばれるサイトカインによる刺激は抗炎症性反応を惹起するM2マクロファージを誘導する。これらのシグナル伝達の研究はさかんに行われ、複数の細胞内シグナル伝達経路や転写制御ネットワークの重要性が示されてきた。近年、ミクログリアを含む免疫細胞の極性化に、解糖系やTCA回路など中央代謝系の反応が関与していることが報告されている。しかしながら、多様な脳疾患におけるミクログリアの極性化に伴う、中央代謝系の役割と細胞内分子ネットワークの実態は依然不明な点が多い。 中央代謝系の細胞内分子ネットワークの解明にはトランスオミクス解析が有効である。この方法では、遺伝子発現、発現タンパク質、低分子化学物質などの多階層の網羅的データから、階層間の因果関係を示す数理モデルを構築して、分子ネットワークの動態を司る中核経路を推定することが可能である。 そこで本研究は、ミクログリア様(iMG)細胞でのトランスオミクス解析を用い、ミクログリアの極性化を司る中央代謝系の細胞内分子ネットワークの実態や役割を解明を目的とする。また、精神疾患のマウスモデルや患者由来iMG細胞を用い、中央代謝系の細胞内分子ネットワークの異常と各脳病態との関連に迫る。さらに異常経路の操作技術を創出する。 今年度は、iMG細胞をLPSにより極性化した際の、時系列的特徴を捉えるのに最適な時点を決定した。さらに、上記で決定した最適な複数の時点における、健常者と大うつ病患者由来iMG細胞において、LPS刺激による遺伝子発現と発現タンパク質の網羅的解析の検討が現在までに完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスオミクス解析では因果関係の推定に時系列データを用いることから、iMG細胞を刺激した際の時系列的特徴を捉えるのに最適な時点を決定した。iMG細胞をLPS刺激によりM1に極性化し、その極性化の過程における複数の時点における炎症関連分子のタンパク量と遺伝子発現をそれぞれウェスタンブロッティング(WB)とqRT-PCRにより計測した。上記で決定した最適な複数の時点における、健常者と大うつ病患者由来iMG細胞において、LPS刺激による遺伝子発現と発現タンパク質の網羅的解析の初回検討が現在までに完了している。取得した網羅的解析のデータで、LPS刺激により大うつ病疾患特異的な変動が見られた分子を抽出し、パスウェイ解析や遺伝子オントロジー解析など従来のバイオインフォマティクス解析に供した。さらに変動が見られた分子群を制御する転写因子の推定を行った。当初の計画通りに、トランスオミクス解析に向けたデータが揃いつつあるため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、①iMG細胞の極性化におけるマルチオミクスデータを測定②iMG細胞の極性化における中央代謝系の数理モデルの構築③iMG細胞の極性化を担う中央代謝系の中核経路とその役割の同定④患者由来iMG細胞での中央代謝系経路の変化の同定までを行う。 具体的には、サンプル数を増やして再現性を確認するとともに、トランスオミクス解析を用いて特異的な中央代謝系を司る分子ネットワークの中核経路を推定する。さらに、トランスオミクス解析から推定された、大うつ病患者由来iMG細胞の活性化を担う、中央代謝系の中核経路の候補因子の役割を実験的に検証する。実験的検証では、組換えレンチウイルスを用いた発現ノックダウンや阻害薬により候補因子の機能を抑制して、LPSで刺激した時のマーカー分子やサイトカイン・ケモカインの発現、活性酸素種の産生、中央代謝系由来の代謝物、酸素消費速度、貪食能などへの影響を調べる。
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