2021 Fiscal Year Annual Research Report
社会性を制御する前頭葉-扁桃体シナプスの発達の臨界期とその神経基盤の解明
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21J01636
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
國石 洋 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 眼窩前頭皮質 / 社会性 / 社会隔離 / 幼少期ストレス / 扁桃体 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
光遺伝学を用いて、社会性を制御すると推測される内側眼窩前頭皮質-扁桃体基底外側核経路(mOFC-BLA経路)のシナプス伝達を単離計測し、離乳後から思春期全体(生後3-8週齢)を通しての社会隔離飼育による社会経験剥奪が与える影響を調べた。その結果、社会隔離マウスはmOFC-BLA回路において、AMPA/NMDA比の低下といったシナプス伝達の異常が引き起こされることを観察した。また、行動下のマウスに対する光遺伝学的なmOFC-BLAシナプスの活動操作を行った結果、mOFC-BLA回路は社会行動を制御することが明らかとなった。これより、思春期の社会隔離はmOFC-BLAシナプスの異常を引き起こすことで、社会性の低下をもたらすことが推測される。 次に、社会隔離飼育がmOFC-BLAシナプス伝達と社会性の異常を引き起こす臨界期、およびそれらの異常に対し再社会化飼育が改善効果をもたらす臨界期を調べた。まず、思春期前半(生後3週齢-5週齢)の期間に社会隔離を行った場合、社会性の低下とmOFC-BLAシナプス伝達の異常が引き起こされるが、思春期後半(生後6週齢-8週齢)に隔離した場合はこれらの異常が観察されないことが明らかとなった。また、思春期に隔離飼育を行ったマウスに対して、その後集団飼育マウスと同ケージ内で飼育することで、再社会化を行った。思春期中に再社会化(生後6-8週齢)を行うと、隔離飼育による社会性とmOFC-BLAシナプスの異常が改善されたが、成熟後に再社会化(生後9-11週齢)を行ったマウスでは改善効果が観察されなかった。以上の結果より、”社会隔離が社会性とmOFC-BLAシナプス機能の異常を引き起こす臨界期”は思春期前半まで(~生後5週齢)であり、それらの異常に対して”再社会化飼育が改善効果を持つ臨界期”は思春期後半(~生後8週齢)までであることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、社会性とmOFC-BLAシナプスの経験依存的発達の臨界期について明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は社会性とmOFC-BLAシナプス機能発達の臨界期を制御する分子・神経メカニズムについて、Parvalbumin(PV)陽性ニューロンとその関連因子の機能的発達に着目し、明らかにする。PVニューロン特異的にcreを発現するマウスの扁桃体にCre依存的に抑制性Dreaddsを発現するAAVを投与する。このマウスにCNOを投与することで、扁桃体のPVニューロンに限局して、その機能を阻害することができる。これを利用し、臨界期を過ぎたマウスPVニューロンを抑制すると経験依存的な社会性・mOFC-扁桃体シナプスの発達を再び引き起こせるかを検証し、その因果関係を調べる。また、この社会性の臨界期メカニズムと、これまでに扁桃体のPVニューロンの関与が報告されている、恐怖消去学習の臨界期メカニズムとの関連も調べる。
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Research Products
(3 results)