2021 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding Johari-Goldstein beta relaxations via glasses composed of dimer particles
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21J10021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 薫平 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ガラス転移 / 過冷却液体 / 緩和動力学 / ポテンシャルエネルギー地形 / Johari-Goldstein beta緩和 / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Johari-Goldstein beta緩和を示すダイマー粒子系の分子動力学シミュレーションを行い、緩和過程の実空間描像の理解、ポテンシャルエネルギー地形の構造、振動と緩和の関係の3点について研究を行った。この系に初めてレプリカ交換分子動力学法を適用し、先行研究では到達できなかった低温の平衡配置と平衡ダイナミクスを得ることに成功した。 実空間描像では、ダイマー分子同士のボンドとして、分子ボンドと原子ボンドの2種類のボンドを導入し、時間発展によりボンドはどのような状態を取って失われていくのかを調べた。その結果、Johari-Goldstein beta緩和は分子のケージ内回転運動による原子ボンドの繋ぎ替え、alpha緩和は分子の並進運動による分子ボンド切断に相当することが分かった。 エネルギー地形では、理論的に予言されていたポテンシャルエネルギー地形の階層構造を数値的に検出することを目的とした。そのために、各時刻の配置のエネルギーを最小化して安定配置毎の相関関数を計算したり、安定配置のポテンシャルエネルギーが初期値からどのようにズレていくのかを調べたりした。その計算により、階層構造は確かに出現し、小さいベイスン間遷移がJohari-Goldstein beta緩和、大きいメタベイスン間遷移がalpha緩和に対応することが分かった。 振動では、低周波数にガラス特有の局在振動が現れ、それらは熱緩和と相関し、緩和予言能はJohari-Goldstein beta緩和のタイムスケールを越え、長時間のalpha緩和のタイムスケールにおいても持続することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定通り、Johari-Goldstein beta緩和の微視的な起源の理解、ポテンシャルエネルギー地形との関係、振動からの特徴付けについて、研究を完成させることができた。 相補的な見方として考えている自由エネルギー地形の特徴付けについて、検討を開始することもできた。 総合的に見て、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、振動からの特徴付けとは相補的な見方として、自由エネルギー地形からの緩和の特徴付けを行う。 具体的には、オーバーラップという配置間の類似度を引数としたガラス系の自由エネルギーである、Franz-Parisiポテンシャルを描くことを目指す。 レプリカ交換モンテカルロ法によってエネルギー地形上の大域的な配置サンプリングを行い、自由エネルギー地形に階層性が出現するかを問う。
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