2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an endogenous ligand-mediated brain gene delivery system
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21J10047
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 誠悟 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | LNP / DNAバーコード / 翻訳 / 遺伝子送達 / 体内動態 / 細胞内動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脂質ナノ粒子(LNP)技術を用いて、治療用遺伝子を低侵襲的な全身投与(静脈内投与)で脳内へ送達可能なドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することを目的としている。解決すべき問題は、①脳への移行と②遺伝子発現効率の大きく二つがある。①については、内因性リガンドを利用することで、BBBを効率的に通過し脳内へ移行するLNPを見出す。そのために、独自の改変リン脂質ライブラリを用いて作製した多様な表面物性を持つLNPの体内動態を評価する。②については、転写・翻訳過程に着目し、遺伝子発現差のメカニズムを解析することで、その律速機構の解明を目指す。当該年度は、①、②それぞれについて、下記項目に取り組んだ。 ①;多様な表面物性をもつ幾種類ものLNPの体内動態を解析するには、従来の方法だと大量のマウスを必要とし、時間とコストがかかる。本研究では、DNAバーコードを用いたLNPのラベル化と次世代シーケンス(NGS)を用いることで、スクリーニングをハイスループット化する。DNAバーコードはプライマー結合部位とバーコード配列から成っており、NGSでの読み取り時にはバーコード配列の違いを読み取る。本研究では、プラスミドDNAにバーコード配列を組み込み、さらにRNAバーコードとして発現させることで、遺伝子の移行と発現を同時に測定可能な評価系を確立する。本年度は、DNAバーコードを設計し、細胞へのトランスフェクション実験により、RNAバーコードの発現を確認した。また、スクリーニング使用するLNPプールを作成し、その物性(粒子径、表面電荷)と保存安定性を評価した。 ②;遺伝子発現活性に大きな差が見られたLNPに関して、遺伝子発現量、細胞内・核内DNA量及びmRNA量を定量し、組織移行から核内移行、転写・翻訳といった各過程の効率を比較した。その結果、翻訳過程の寄与が大きいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NGSによるLNPの体内動態評価系の確立に関して、現時点で実際に体内動態測定までは行えていないが、プラスミドDNAバーコードの設計、DNAバーコードからのRNAバーコードの発現の確認、LNPプールの作成と必要な検討は概ね順調に進んでいる。 遺伝子発現のメカニズム解析については、LNPに封入した遺伝子の体内動態・細胞内動態の解析を終え、LNP移行・発現細胞種の同定も終了した。 以上から、次年度は本研究の中核的な部分に、十分に迫れると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NGSによるLNPの体内動態評価系の確立に関して、各臓器・細胞種からのDNAバーコードの抽出・精製といったNGSサンプル調製までのプロトコルを確立し、実際にNGSでLNPの体内動態解析を行う。脳移行性の高い傾向があるLNPを選抜し、それらに関して、脂質組成の最適化を行っていく。 遺伝子発現のメカニズム解析については、LNPを取り込み、遺伝子発現している細胞のトランスクリプトーム解析を行うことで、その細胞の状態(細胞内シグナル、代謝等)の変化を包括的に捉える。得られた結果から、遺伝子発現、特に翻訳過程に影響する因子や変動したシグナルを抽出し、ノックダウン実験等の阻害実験でそれら因子の送達遺伝子の発現活性への影響を検証する。
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