2021 Fiscal Year Annual Research Report
波形解析に基づく火山型深部低周波地震のエネルギー放射プロセスの解明
Project/Area Number |
21J10074
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
及川 元己 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 火山型深部低周波地震 / 地震波放射エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前期に火山型深部低周波地震のメカニズム解と応力場の時空間変化を比べることで、低周波地震が周辺の応力場によって断層滑りが駆動される現象であることを明らかにした。この研究成果は地震学会やAGU fall meetingといった国内や国外の学会にて発表を行い高く評価され、12月にアメリカ地球物理学会の専門誌に受理され、現在は出版されている。後半では火山型深部低周波地震の継続時間と地震波放射エネルギーを推定し、両者の経験則から低周波地震の断層成長プロセスを考察しようと試みた。この研究では継続時間と地震波放射エネルギーを微分進化法によって、観測波形のエンベロープから同時に推定する方法を開発した。この解析を火山型深部低周波地震が発生している宮城県の蔵王火山とプレート境界で低周波地震が発生している愛媛県西部の領域で行い、二つの異なるタイプの低周波地震で継続時間と地震波放射エネルギーの経験則がどのようになるのかを調べた。この結果、両者において地震波放射エネルギーが継続時間の1.5乗に比例する関係を得た。この経験則は普通の地震から期待される3乗則とは異なるものである。この過程を考えると、低周波地震が非地震性滑りが拡散的に広がる中で一定の歪みを解放するプロセスであることが示唆される。低周波地震のマグニチュードが小さいことを考慮すると、この拡散現象は流体移動のような比較的遅い過程ではなく応力拡散のような速い拡散過程であることが示唆される。この研究成果は5月の日本地球惑星科学連合大会で発表予定である。また、現在論文も執筆中であり2022年度中に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では地震波放射エネルギーの推定に必要となる減衰やサイト特性の推定と継続時間の推定を行う予定であった。現段階ではこれら二つを同時に推定できる手法を開発することができており計画よりも効率的に推定することができるようになっている。また、減衰やサイト特性についても観測波形から得られた値から地域ごとの相対値として決定することができており、減衰やサイト特性の推定も計画通りに進んでいる。現在では継続時間と地震波放射エネルギーの経験則から背景の物理過程の考察に進んでおり、当初の計画よりは少し進みつつも概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中にはまず、継続時間と地震波放射エネルギーの経験則から考察される物理過程に関する論文を執筆し投稿する。投稿先はアメリカ地球物理学会の雑誌を考えている。次にこの経験則から考察される拡散過程を力学的な数値シミュレーションに基づいて再現してみる。その際のモデルには、断層強度が弱い領域をランダムに配置しその中でゆっくり滑りが発生することで応力が変化するというものを考える。そのシミュレーションから得られる震源でのモーメント解放の時間変化などを調べる。他の内容としては、継続時間が長いイベントに注目してその振動特性を調べるということも行うつもりである。最後にこれらの結果を博士論文にまとめる。
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