2021 Fiscal Year Annual Research Report
ペロブスカイトナノ結晶を用いた超解像イメージング用光スイッチの開発
Project/Area Number |
21J10078
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
明石 優志 熊本大学, 自然科学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / ナノ結晶 / ジアリールエテン / フォトクロミズム / クリック反応 / 蛍光スイッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
波長の異なる二種類の光照射で蛍光強度の切り替えが可能な光スイッチング蛍光プローブは、主に超解像イメージング技術で使用されている。この蛍光プローブはこれまで緑色蛍光タンパク質などの有機色素が主流であったが、近年、光褪色しにくいコロイド状ナノ結晶を用いた無機蛍光プローブが注目を集めている。中でもペロブスカイトナノ結晶(PeNC)は高い発光量子効率でシャープな発光を示し、ジアリールエテンとの複合体が優れた光スイッチング特性を示すことが報告されているが、水がある環境で不安定であるといった課題があった。生体内で不安定なPeNCを安定化するためにポリマーや酸化物を用いた表面被覆法が数多く研究されているが、光スイッチングPeNC蛍光プローブの実現にはさらなる安定性の向上(溶出Pbの低減)と高い蛍光コントラストの両立が求められる。 令和三年度は、PeNC表面上でのクリック反応を用いてポリマー前駆体およびジアリールエテン分子の接合を試みた。ここでは、まずPeNC表面に末端アルキン配位子を導入し、そこに末端アジド基を有するモノマー分子、もしくは末端アジド基を有するジアリールエテン分子を加えてPeNC表面上でクリック反応が進行する条件を調査した。PeNCとモノマー分子のクリック反応は、有機銅触媒が溶解した有機相中で行われ、FT-IRとH-NMRで反応が良好に進行していることが観察された。得られたモノマー分子被覆PeNCについては、表面上で重合反応を進行させてポリマー化した後、安定性を調査する予定である。また、PeNCとジアリールエテン分子のクリック反応も、有機銅触媒が溶解した有機相中で反応が良好に進行していることが観察された。得られたジアリールエテン被覆PeNCは複数サイクルの光スイッチング特性を示し、クリック反応によってジアリールエテン分子をPeNC表面上に固定化できていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、PeNC表面に末端アルキン配位子を導入し、そこに末端アジド基を有するモノマー分子、もしくは末端アジド基を有するジアリールエテン分子を加えてナノ結晶表面上でクリック反応が進行する条件を調査した。最適条件を探索した結果、FT-IRとH-NMR分析により、クリック反応によってモノマー分子およびジアリールエテン分子をPeNC表面上に固定化しうるという知見が得られた。また、得られたジアリールエテン被覆PeNCは複数サイクルの光スイッチング特性を示した。したがって、おおむね順調に研究が進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、当初の実験計画に従って現在進めている研究方針を継続する。前年度に得られたモノマー分子被覆PeNCについて、ナノ結晶表面上で重合反応を進行させてポリマー化した後、安定性を調査する。その後、ジアリールエテン分子と被覆ポリマーの比率を最適化し、安定性と光スイッチング特性を両立したPeNC蛍光プローブの開発を目指す。満足のいくPeNC蛍光プローブが得られた場合、実際にプローブを細胞中に取り込み細胞内からのPeNCの蛍光を観察する。この実験により、作製したプローブが安定な光スイッチング特性を示すかを確認し、超解像イメージング技術への展開を試みる。
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