2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J10094
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮武 衛 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 和漢朗詠集 / 千載佳句 / 新撰朗詠集 / 徒然草 / 和漢聯句 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は『和漢朗詠集』が材料のひとつとした『千載佳句』との関係について整理し、さらに『千載佳句』・『和漢朗詠集』・『新撰朗詠集』がどのような関係にあるのかを考察した。『和漢朗詠集』が『千載佳句』を材料としていることを、日本人の句の取材源を検討することによって再検討した結果、『和漢朗詠集』における日本人の句は、律詩・絶句といった詩の全体を収める文献を用いたことが窺える。いっぽう、中国人の漢詩句は詩の一部分を収める文献を用いたことを推測させる。以上の事実から、『和漢朗詠集』が『千載佳句』を材料にしているという仮定のもと、『和漢朗詠集』と『千載佳句』とでは、収録される部立が共通しない作品が多く認められる原因について考察した。『和漢朗詠集』は『千載佳句』を、部立名の次元と個個の漢詩句の出典の次元という、ふたつの次元に分けて材料としていることが窺える。これと対照的なのが『新撰朗詠集』における『千載佳句』の利用方法である。『新撰朗詠集』では『千載佳句』と異なる部立に句を部類することが皆無である。これは前述した『和漢朗詠集』のあり方と大きく異なる。ここに見られる両者の違いは、『和漢朗詠集』が、『新撰朗詠集』が編まれた時代には、すでに規範として重視される作品になっていたことを示すと考えられる。以上の内容をまとめ、来年度、査読雑誌に投稿する。 また、『和漢朗詠集』の漢詩句を受容したと考えられる例として『徒然草』を取り上げ、従来とは異なった『徒然草』の解釈を提示した。この研究は、典拠となる漢詩句の問題を中心としつつ、あわせて、中世歌学と実作との関係についても考察を及ぼしたものである。これについては、すでに査読雑誌に掲載が決定している。 このほか、曼殊院蔵の和漢聯句作品の翻刻・注釈を進め『曼殊院蔵 和漢聯句作品集成』として公刊した(共著)。注釈についても査読雑誌に連載が決定している(共著)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果は、研究会での発表を2件、論文を5本(来年度に刊行予定・共著を含む)、著書(共著)を1冊である。当初の計画では予定していなかった、和漢聯句作品の訳注を作成したため、かならずしも当初の計画の通りには進んでいない。しかしながら、和漢聯句の注釈には、日本文学・中国文学についての広い知見が求められ、もちろん『和漢朗詠集』も、そのなかに含まれる。訳注を作成するなかで、『和漢朗詠集』の享受の様相について、新たな一面を明らかにすることができたといえよう。したがって、当初の計画以上とまではいえないが、おおむね計画通りに進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に進めていた研究を完成させ、査読雑誌に投稿する。 さらに『和漢朗詠集』の古注釈の様相について、とくに『和漢朗詠集古注釈集成』第2巻所収の、いわゆる見聞系に分類される注釈書のうち、国立国会図書館本を対象として「説話的な注」がどのようにして生み出されたのかを考察する。
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Research Products
(6 results)