2021 Fiscal Year Annual Research Report
Creating a highly accurate neuro-musculo-skeletal model for the elderly people: Aiming to develop a fall prevention system
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21J10122
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大津 創 東京都立大学, システムデザイン研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 歩行 / 推進力 / 安定性 / 歩行シミュレーション / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の転倒を予防するには,彼らの歩行中の安定性を評価し転倒リスクの高い個人を特定することが重要である.歩行の安定性に悪影響を与える要因の1つに,蹴り出し時に発生する推進力の低下が仮説として挙げられているが,推進力と安定性の関係性は完全には明らかにされていない.今年度はこれらの関係性を明らかにするために,歩行モデルを使用したシミュレーション研究(1)と実験計測研究(2)の2つに取り組んだ.
(1) 歩行モデルとして,当初の計画ではfoot placement estimator (FPE) を使用する予定だったが,simplest walking model (SWM) とrimless wheel (RW) を使用した.推進力を計算するために,SWMを使用し,停止に要する歩数Nを計算するために,RWを使用した.歩数Nを安定性の間接的な指標として使用し,Nが少ないほど停止状態に近い歩行を表す.結果として,推進力の低下が歩幅の低下と歩行速度の低下の組み合わせによって達成されることを明らかにし,前者はNを増加させ,後者はNを減少させた.前者は人の歩行実験の結果と一致しているが,後者は実験的に検証されていなかった.この結果は,高齢者に良く見られる推進力の低下のメカニズムを調査する上で重要な洞察を提供した.
(2) 埼玉県立大学の小栢進也准教授,同大学院生の喜多俊介氏,東京湾岸リハビリテーション病院の片桐夏樹氏との共同研究として,3次元動作解析装置とトレッドミルを使用した歩行の計測実験を行った.8月には若年者を,11月から1月には高齢者を対象に実験を行った.この実験は,①(1)のシミュレーション研究と人の歩行計測の結果の比較により,人の歩行戦略に関する新たな洞察を得るため,②安定性の新たな指標を提案するため,に行った.現在,論文投稿に向けてデータを解析している最中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,(1)歩行シミュレーション研究と(2)実験計測研究の2つの成果を論文として投稿することを目標としていた.(1)に関しては,論文投稿と受理まで至り,(2)は論文投稿まで至らなかった.それらを考慮すると,研究はおおむね順調に進展していると考える.これらの研究の進捗は以下の通りである.
(1) 歩行シミュレーション研究に関して,当初の計画では,歩行モデルとしてfoot placement estimator (FPE) を使用することを想定していた.しかし,FPEは重心周りの慣性モーメントを含めた計算が必要であるため,議論が多少複雑になる可能性があった.そこで,モデルを単純化させるために,慣性モーメントを考慮しない2つのモデル(simplest walking model,rimless wheel)を使用した.このように複数のモデルの原理を調査し,検証する作業に予定より時間がかかったが,その後はスムーズに進み,Journal of Biomechanicsへの受理へと繋がった.したがって,当初の計画以上に進展していると言える.
(2) 実験計測研究に関して,共同研究先との連携もスムーズに進み,予定通り終了した.被験者の募集や実験設備の設定など,研究代表者1人では実施するのが困難であった問題に対し,共同研究先である埼玉県立大学の小栢進也准教授,同大学院生の喜多俊介氏の協力により,それらを円滑に実施することが出来た.また,高齢者のバランス機能測定をする上で人手が足りない問題が起こったが,東京湾岸リハビリテーション病院の片桐夏樹氏の協力により,問題は解決された,研究成果を国際会議で発表することは出来たが,当初の予定であった論文投稿には至らなかった.それは,シミュレーション研究の論文投稿の作業に時間を要したことが原因である.したがって,研究は当初の計画よりやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に単純な歩行モデルを使用して,推進力と安定性の関係性を構築することに成功した.さらに,歩行の実験データを取得することも出来たため,2022年度は2021年度の成果や実験データを使用して,データの解析や結果の議論に注力する.
当初は,単純歩行モデルの制御方法を神経筋骨格モデルに組み込むことを計画していたが,現在それを実施する計画にはない.その理由は,単純歩行モデルのみで議論出来ること,明らかとなったことが想像以上に多かったため,2022年度は単純歩行モデルを使用した研究に絞ることとした.具体的には以下の2つのテーマで研究を行う.
(1) 若年被験者の歩行データと歩行モデルによる結果の比較により,推進力や安定性,歩行コストの観点から人が歩行速度を調整する際の戦略を調査する.推進力・安定性・歩行コストと歩行速度の関係性を明らかにすることで,人の歩行戦略に関する新たな洞察を得る. (2) 若年被験者と高齢被験者のデータと歩行モデルによる結果の比較により,(1)で得られた関係性から高齢者はどのように逸脱するのか,もしくは若年者と変化がないのか,調査する.その差異を調査することで,リハビリテーション応用にも寄与できると考える.
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