2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J10136
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船田 晋作 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | スピン波 / フェリ磁性体 / 磁化ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性体中の磁気モーメントの歳差運動の空間的伝搬であるスピン波を用いた論理演算素子は省電力化の観点から注目を集めている。その中で本研究はフェリ磁性体の反強磁性的な性質を利用することによってスピン波の偏光を新たな自由度として制御を実現することを目的としている。 これまでの測定において、スピン波の光学測定装置を用いてフェリ磁性体アモルファス合金GdCoのスピン波伝搬測定を行ったが、偏光の利用が可能であるとされる角運動量補償点に近い組成を持つ試料ではスピン波の検出が困難であった。これは角運動量補償点近傍においては磁化の歳差運動の減衰定数が増大し、スピン波の伝搬の減衰が大きくなったことが原因であると思われる。 そこで本研究ではこれまでのアモルファス合金であるGdCo薄膜ではなく、絶縁体であり減衰定数が小さいことが期待される希土類鉄ガーネットGd3Fe5O12薄膜に着目し、その作製および評価を行った。作製はパルスレーザー堆積法(PLD法)を用いた。まずは作製時の基板温度、酸素分圧、レーザーのエネルギーや繰り返し周波数、スポットサイズなどの最適化を行った。作製した薄膜はX線回折法やSQUIDを用いて評価を行い、バルクに近い格子定数や磁化温度依存性を持つことを確認した。次にこの試料の磁気モーメントの歳差運動の減衰定数の温度依存性を整流検波法によって評価した。その結果、副格子を考慮した解析から減衰定数が先行研究のフェリ磁性アモルファス合金GdFeCoの1/10程度であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、磁気ダンピング定数の小さな試料の作製を目指し、パルスレーザー堆積法を用いてフェリ磁性絶縁体薄膜の作製および評価を行った。整流検波法と共鳴吸収法を用いて磁気ダンピング定数の評価を行い、磁気ダンピング定数が従来用いられてきたフェリ磁性合金の1/10程度であることを明らかにした。これはスピン波伝搬の長距離化だけでなく磁壁レーストラックメモリの駆動の高速化なども期待できる結果であり、フェリ磁性体磁化ダイナミクスを利用するデバイス応用に寄与するものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに今年度実施したフェリ磁性絶縁体Gd3Fe5O12薄膜のダンピング定数の評価に関する研究をまとめて国際学会における発表と論文発表を行う。次に作製した薄膜を用いてスピン波の伝搬測定を行う。試料上に作製した高周波アンテナによる電気的な測定を行い、フェリ磁性体スピン波の伝搬特性を調査する。試料の温度を変化させつつスピン波伝搬の非相反性の評価を行うことでスピン波の偏光と試料の角運動量に関する知見を得る。
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