2021 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Analysis on Economic Behavior of Temporary Migrant Workers and Social Security in Developing Countries
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21J10147
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Research Institution | JICA Ogata Sadako Research Institute for Peace and Development |
Principal Investigator |
中村 信之 独立行政法人国際協力機構(緒方貞子平和開発研究所), 緒方貞子平和開発研究所, 研究員
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 国際送金 / 日本 / COVID-19 / 利他性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では国際送金等、一時的移住者の受入国での経済的行動のメカニズムについて考察する。 途上国の人々が先進国に職を求めて渡航する状況は年々増加の一途を辿っているが、こうした移民の半数近くは、入国後5年以内に帰国する「一時的移住者」とされる。しかし、一時的移住者の入国後の行動の背景となるメカニズムに関しては不明瞭な点も多く、更なる議論が必要である。特にCOVID-19の流行により、国際送金は当初大幅な減少が予測されたが、2020年の低・中所得国への送金フローは前年比1.6%減に抑えられた。国際機関等はこの理由として、受入国の財政刺激のほか、母国世帯に対する出稼ぎ労働者の利他的動機などをその理由に挙げているものの、さらなる調査が急務であり、本研究では独自に収集するデータを基に一時的移住者の送金行動について検証する。 当初の研究計画では、香港で働くフィリピン人家政婦を対象とし母国世帯の社会保障への加入などが彼らの送金などの経済的行動に影響を及んでいるか、現地研究者の研究協力の下、調査を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの流行拡大や現地の政情不安により、大学院在学中の香港での調査実施は困難との結論に達した。その後、対象を検討しなおし、フィールドを香港から日本に、対象を外国人家政婦から介護分野で働く外国人労働者に変更し研究を行った。変更後の研究計画では日本の介護事業所に勤務する外国人労働者を対象に調査を実施し、パンデミックや各国の緊急支援が送金行動に与えた影響やその異質性について定量的な分析を行い政策的示唆を導出することを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要で述べた通り、新型コロナウィルスの流行拡大や現地の政情不安により、大学院在学中の香港での調査実施は困難との結論に達した。その後、対象を検討しなおし、フィールドを香港から日本に、対象を外国人家政婦から介護分野で働く外国人労働者に変更し研究を行った。その為、当初の研究計画より遅れが生じている。 2021年夏以降に、全国約4000の事業所にオンラインリンクを記載した調査案内をランダムに送付し、調査対象者に各自のデバイスを使ってアンケートへの協力を依頼した。調査では社会経済的特性や母国世帯の緊急公的支援の有無や感染状況、出稼ぎ労働者の利他性について、オンライン調査を用いた調査や経済実験を行った。とりわけ、送金行動については四半期ごとに送金行動の聞き取りを行った。また利他性については、心理学分野で用いられる経験に基づくスケールや実験経済学分野で用いられる独裁者ゲームのフォーマットを用いて包括的に測定を試みた。調査では全国の介護事業所に勤務する200人から回答を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更はあったものの、2021年夏からオンラインベースのアンケート調査を実施した。秋以降に分析、論文執筆に取りかかる。論文は2021年末から2022年初頭を目途に取りまとめ、第一段階として、2022年春に研究代表者の博士論文の一部としてまとめる。その後、国際学術誌への投稿や国内外の学会での発表を計画している。必要に応じて追加の調査等も検討する。 また、本研究に先行して、科研費による助成を基に、2題の外国人労働者・国際労働移動に係る実証分析を行っており、2021年度中にそれぞれ国内外の学会で発表した。「COVID-19に伴う都市閉鎖が途上国労働者の移住意向にもたらす影響」に関しての研究は2021年10月に「Journal of Asian Economics」へ、「香港の出稼ぎ家政婦の雇用が地元家庭の出産選択にもたらす影響」に関しての研究は「Journal of Demographic Economics」への掲載が決定したことを付記する。
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