2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J10152
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
六車 楓 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 中国哲学 / 中国医学 / 身体観 / 天人相関 / 巫 / 医 / 出土資料 / 出土文献 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2020年末に公開された清華大学蔵戦国竹簡『行称』『病方』の釈読と思想的考察を行った。 『行称』は季節や天の運行に合わせて政治を行うように説く時令説と、択日・禁忌の要素とが組み合わさった文献である。一方、『病方』は心痛症・身体の動かない病・目の病という3種類の病について、その病名と処方とを記した簡潔な処方集である。心痛症と身体の動かない病に効く薬は酒で煮込んで内服し、目の病には水で薬を煮た汁でその患部を洗う。文中に出てくる薬名は本文献が筆写されたであろう楚地域独特の名称である。 両文献はこのように、内容が全く異なるにもかかわらず、1冊の竹簡に連続して書写されていた。報告者はこれらが同冊になっている理由を2つ導き出した。1つ目の理由は、書写者が両文献に現在あるいは未来の状況を変えたり、具体的な行動内容を決めたりする性質が共通すると考えたからである。2つ目の理由は、『行称』は天文の、『病方』は医学の専門知識を要する内容であることに鑑み、書写者がいずれも実用書と判断したからである。本研究により、本文献が筆写された戦国時代には医学思想が天文学などとひとまとめにされていた可能性が従来以上に濃厚になった。文献の書写状況から、当時の医学思想の扱いが分かった。 本研究で明らかになった戦国時代頃の医学の思想的位置を踏まえながら、2022年度は主にその中国医学思想における身体観がどのようなものであったのかを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『行称』『病方』の釈読と思想的考察を行い、その成果を論文で報告できたため。また、申請当初に検討する予定であった馬王堆漢墓帛書『胎産書』の代わりに、新しく2021年11月に公開された清華大学蔵戦国竹簡『五紀』の釈読に着手したことも、研究が進展していると評価できる。新型コロナウイルスの感染が収まらず、国内での資料調査は断念せざるを得なかったが、図版資料を駆使して研究をおおむね進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は『五紀』の思想的考察を行い、学術誌に投稿する。また、2021年度に着手できなかった馬王堆漢墓帛書『胎産書』など、その他の出土資料の検討も行う。ここまでの研究成果を総括し、中国医学思想における身体観の実像に迫る。中国や日本国内での資料調査を行うかは、新型コロナウイルスの感染状況を考慮して慎重に判断したい。
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Research Products
(2 results)