2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Theranostics Agents for Site-specific Cancer Treatment Based on Near-infrared Absorbing Complexes
Project/Area Number |
21J10204
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澤村 瞭太 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 近赤外吸収錯体 / セラノスティクス / 光音響イメージング / 光熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,光音響イメージングによる診断と光熱療法による治療を組み合わせたがんのセラノスティクスの実現を目指し,環境応答性の近赤外吸収を示すジラジカル白金(II)錯体を基体とした,がんへピンポイントに作用するセラノスティクス試薬の創製を目指す. 本年度はがん細胞への標的指向性付与を志向し,がん細胞で過剰発現している受容体と特異的に結合するターゲティング物質を,スペーサーを介してジラジカル白金(II)錯体へ修飾する方法について検討した.ターゲティング物質にはモデル化合物として葉酸を選択し,カルボキシ基を配位子に有する水溶性錯体への修飾を目指した.結果的に,修飾部位を有する配位子を予め合成し,白金錯体としたのち葉酸を修飾する多段階での合成により,目的の葉酸修飾錯体を得た.得られた錯体は,pH変化や還元剤であるグルタチオン存在下で,配位子の酸化還元による近赤外吸収の変化を示し,ジラジカル白金錯体としての性質を保持した.さらに,錯体(20 μM)とともにヒト乳腺癌細胞株MCF-7を37 °Cで4時間培養したところ,その細胞懸濁液から錯体由来の近赤外吸収を確認できた.錯体は葉酸受容体を介したエンドサイトーシスにより取り込まれると予想したが,現時点で決定的な証拠が得られていない.一方で,非修飾錯体に比べて細胞内へのPt(II)の導入量は約4倍に増加しており,葉酸修飾が細胞への内在化を促進する可能性が示唆された. 当初は,錯体がもつ近赤外光のエネルギーを熱に変換する光熱効果に伴う細胞殺傷能や,細胞毒性試験による半数阻害濃度の算出,正常細胞・がん細胞間での導入比較まで行う予定であった.しかし合成にかなりの期間を要したうえ,葉酸修飾の有用性を明確に提示できておらず,当初の計画からかなり遅れている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
合成して得られた錯体のがん細胞への導入機構を明らかにできず,培養条件だけでなく,錯体の分子設計から再考する必要があると判断したため,当初の計画に比べて進捗状況に遅れが生じている.
|
Strategy for Future Research Activity |
錯体の培地への仕込み濃度を増やし,Pt(II)導入量,オルガネラ染色による細胞内分布の同定,エンドサイトーシス阻害の影響などを調査し,葉酸修飾の有用性を評価する.有用性が判断できない場合,分子設計を再考して適切なスペーサーの選択,あるいは抜本的にターゲティング物質を変更し,より広範な意味でのターゲティング物質修飾の有用性の評価に移行する.
|
Research Products
(7 results)