2021 Fiscal Year Annual Research Report
クリック反応可能なマイクロカプセルを用いた幹細胞の増殖・分化誘導プロセスの開発
Project/Area Number |
21J10215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 悠一朗 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロカプセル / クリック反応 / 幹細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、クリック反応可能なマイクロカプセルを用いた幹細胞の連続的な増殖・分化誘導プロセスの開発を目指している。具体的にはマレイミドとシクロオクチンを共に修飾したアルギン酸マイクロカプセルへ幹細胞の一つである間葉系幹細胞(MSC)を封入し培養を行う。培養過程において二種類のクリック反応(マレイミド・チオール反応とシクロオクチン・アジド反応)を活用し、段階的に増殖誘導因子、分化誘導因子をカプセル中に導入することで封入幹細胞MSC の増殖および分化誘導を連続的に行うことを実証したいと考えている。 今年度はまず、シクロオクチン修飾アルギン酸マイクロカプセルに対するアジド分子の導入について検討を行った。シクロオクチン・アジド反応は生体直交型クリック反応の一種であり、非特異的な反応を生じることなくカプセル中へアジド分子の導入が可能になることが期待される。そこで、生理食塩水、血清無しの基礎培地、血清入りの培養培地に浸漬されたシクロオクチン修飾アルギン酸マイクロカプセルに対しアジド化蛍光分子を添加し一晩静置後カプセル中の蛍光強度を定量したところ、全ての条件間で蛍光強度に有意差はなかった。したがってシクロオクチン・アジド反応により培養培地中においても非特異的な反応を回避する形でカプセル中へのアジド分子の導入が可能であることが示唆された。またカプセル中の蛍光強度はアジド化蛍光分子添加後2時間程でプラトーに達しており、非常に迅速な分子導入が確認された。 さらに、骨前駆細胞を封入したシクロオクチン修飾アルギン酸カプセルに対して培養途中でアジド化された骨誘導能を有するペプチドを導入することで、封入細胞の骨分化が促進された。したがって本シクロオクチン修飾アルギン酸マイクロカプセル培養システムは任意のタイミングでのアジド化分子の導入により封入細胞の機能スイッチングが可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の検討で、細胞培養条件下におけるシクロオクチン修飾アルギン酸マイクロカプセルへのアジド分子の導入が可能であり、さらにアジド化生理活性分子をシクロオクチン修飾アルギン酸マイクロカプセルに任意のタイミングで導入することで封入細胞の機能スイッチングが可能であることが示唆された。そのため、全体としての進捗状況は、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずマレイミドとシクロオクチンを共に修飾したアルギン酸マイクロカプセルを開発し、カプセル中へのチオール分子およびアジド分子の導入可能量について詳細な検討を行っていく。 さらに、実際にマレイミドとシクロオクチンを共に修飾したアルギン酸マイクロカプセルに対してMSCを封入し、段階的に増殖誘導因子、分化誘導因子をカプセル中に導入することで封入幹細胞MSCの連続的な増殖・分化誘導を実証する。また撹拌型バイオリアクターによるマイクロカプセル培養も併せて検討することで、浮遊懸濁培養系への応用可能性の一端を示したいと考えている。
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