2021 Fiscal Year Annual Research Report
一般化されたリノーマロン除去法の開発とフレーバー物理予言への応用
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21J10226
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 祐輝 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | リノーマロン問題 / 摂動QCD計算 / 高精度理論計算 / フレーバー物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで開発したリノーマロン除去の手法をボトモニウム系やB中間子系の物理量の高精度計算に応用するための準備として、以下の二つを中心に研究をおこなった。 (1)Bメソンのセミレプトニック包括崩壊幅を演算子積展開の枠組みで最新の3次摂動補正を用いて計算した。この際ボトムクォークのpole質量をボトモニウム1S基底状態の質量を用いて書き表すことで、得られる摂動展開はより収束性の良いものになった。一方で非摂動的な効果はBメソンの超微細分裂の実験値から決まる不定でない部分のみを取り入れた。摂動の三次補正の大きさは取り入れた非摂動的な効果の大きさと同等で、これは今後の高精度計算に向けては摂動計算からのリノーマロンの除去が必要であることを示している。 また崩壊幅の実験値との比較から得られるCKM行列要素の大きさ|V_cb|の主要なエラーはボトモニウム1S基底状態のスピン状態の選択に由来することがわかった。現在スピン状態を説明するのはボトムクォークのpole質量とボトモニウム1S基底状態の質量関係式の摂動展開である。今後この摂動展開の高次補正を計算することで、このスピンの問題の原因が摂動補正と非摂動補正のどちらであるかを明らかにする必要がある。 (2)摂動展開に含まれるUVリノーマロンと呼ばれる交代級数的に振舞う発散の原因を避ける方法を開発した。演算子積展開の枠組みで除去されるIRリノーマロンと異なり、UVリノーマロンによる発散は再総和可能である。その一方で、有限次数までの摂動展開では理論計算を不安定にさせる。本研究で開発した手法は、物理量のIRリノーマロンを除去する1変数積分表示において繰り込み群方程式の知識を使うことで、UVリノーマロンによる発散を有効結合定数に吸収させることで再総和する。今後bフレーバー物理量の計算に本手法を適用して、これまでの精度を超えた理論パラメータの決定が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまではBメソンのセミレプトニック包括崩壊幅の最新の摂動補正に対する理解を深めることを重視して研究をおこなった。摂動補正の大きさは非摂動補正の大きさに匹敵していることがわかり、今後リノーマロンを除去することが必要であることを明らかにできた。また同時にボトモニウムのエネルギースペクトルのスピン依存性の理解が重要であることも明らかになった。両者においてリノーマロンを除去するには至らなかったが、そのための手法の改善も同時並行で進めており、今後の研究をスムーズに遂行できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ボトモニウムのエネルギースペクトルとBメソンのセミレプトニック包括崩壊幅からのリノーマロン除去を行い、それぞれボトムクォーク質量、CKM行列要素の大きさ|V_cb|の高精度決定を行う。これまでの研究から得たボトモニウムのスピン依存性などの知見をもとに、理論パラメータの決定値の評価を定量的に行い、更なる高精度決定に向けた課題を明らかにする。
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Research Products
(4 results)