2021 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスフリーな実時間計測で核外テロメラーゼ逆転写酵素の細胞死制御に迫る
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21J10299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江端 拓志 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | アポトーシス / ミトコンドリア / テロメラーゼ / 生細胞イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
採用時点で作製が完了していた、活性・局在に影響を及ぼさない蛍光標識TERTを用いた生細胞イメージングにより、酸化ストレス刺激直後に高いTERTのミトコンドリア局在率を示す細胞は全てアポトーシスに至ること、酸化ストレス刺激直後のTERTのミトコンドリア局在率はアポトーシスに至るまでの時間と正の相関を示すことを見出した。これらの結果から、ミトコンドリア局在TERTは刺激直後ではアポトーシスを決定し、アポトーシス執行段階ではアポトーシスを遅延するというモデルを提唱した。ミトコンドリア局在TERTのアポトーシス制御機構はこれまで、アポトーシス促進仮説とアポトーシス抑制仮説との正反対の仮説に議論が分かれていたが、本研究において提唱したモデルは相反する仮説どちらをも含む統合モデルであった。 さらに、TERTのミトコンドリア局在を阻害すると報告されたTERT変異体について、野生型TERTと同様の蛍光タンパク質標識を行い、生細胞イメージングによる細胞死計測を行った。その結果、変異体ではTERTのミトコンドリア局在に依存するアポトーシスには変化がなく、TERTが核内に留まっている細胞の一部において執行されるアポトーシスの抑制・遅延が確認された。これらの結果から、TERT変異体はアポトーシス抑制効果を示すものの、この抑制効果は先行研究で示唆されたTERTのミトコンドリア移行阻害によるものではなく、核におけるTERTのなんらかの機能が変異により影響を受けたことによるものであることが示唆された。 これまでに得られた成果について、国内外の学会で発表するとともに、論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題に取り組む中で、申請者がこれまでに行ってきた明視野観察による実時間細胞死計測について、顕微鏡観察条件下における細胞ストレスをさらに低減できる可能性を見出した。細胞死計測において細胞がストレスを受けないことは結果の解釈を左右する重要な要素であるため、ストレス低減条件の最適化を最重要項目とし、本研究を遂行した。こうして最適化を図った観察条件による実時間細胞計測を行うことで、テロメラーゼ逆転写酵素TERTのミトコンドリアにおけるアポトーシス細胞死制御について、新たな知見を見出した。こうした事情から、本研究課題において提案していた、様々な細胞死経路を標的とした阻害剤スクリーニングについては実施ができておらず、進捗としては(3)やや遅れている、に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初予定していたもののこれまで実施することのできていなかった、様々な細胞死経路を標的とした阻害剤スクリーニング及び得られた細胞死画像ライブラリーの機械学習から、阻害剤・ストレスフリーな実時間細胞死計測法の構築を行う。こうして構築した細胞死計測法をテロメラーゼ逆転写酵素TERTのミトコンドリアにおける細胞死制御の研究に適用し、これまでに計測したアポトーシスを含めた様々な細胞死とミトコンドリア局在TERTとの関連を検証する。
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