2021 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がんの転移・再発を促進する膜タンパク質因子の機能解明と治療応用
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21J10379
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森田 敦也 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸がんモデル / 転移 / ドライバー遺伝子 / 腫瘍内不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のゲノム解析から大腸がんのドライバー遺伝子は明らかになってきたが、ドライバー遺伝子の蓄積状態と転移の関係には不明な点が多い。大腸がんのドライバー遺伝子であるApc (A)、Kras (K)、Tgfbr2 (T)、Trp53 (P)の変異を導入したマウス腸管腫瘍オルガノイド細胞(AKTP細胞)は、同種マウスの脾臓に移植すると、肝臓に線維化を伴った転移巣を形成する。そのため、本研究ではこの腫瘍細胞を大腸がんの肝転移モデルとして用い、転移を促進するメカニズムの解明を推進する。その際、腫瘍細胞と微小環境の相互作用に機能する可能性がある、膜タンパクの役割に着目する。そこで、転移能を持たないApc単一変異の腸管腫瘍オルガノイド細胞と比較し、AKTP細胞で有意に発現が高い膜タンパクを標的にノックアウト細胞株を複数樹立した。これら細胞株を同種マウスの脾臓に移植すると、遺伝的背景が同一にも関わらず、肝転移能が高い細胞株(高転移株)と著しく低い細胞株(低転移株)が混在していた。さらに解析を進めると、この現象は標的膜タンパクのノックアウトに依存しないことが判明し、親株のAKTP細胞集団は転移能に差のある細胞が混在した不均一な細胞集団であることが明らかとなった。この転移能の差を明らかにするために、移植直後から腫瘍細胞の増殖を比較した結果、低転移株は宿主マウスの肝臓から数日で排除され早期の段階で定着できていないことがわかった。今後、これら高転移株と低転移株の表現型をもたらす生物学的メカニズムを明らかにし、その上で標的膜タンパクの機能的な関与を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた、標的膜タンパクの発現制御による転移能の比較検証を行うため、親株AKTP細胞集団から複数の細胞株を樹立した。その結果、同一の遺伝的背景を持つ細胞株間でも転移能の有意な差が認められた。このことから、転移における膜タンパクの機能を解析するためには、AKTP細胞集団に存在する転移能の不均一性を考慮する必要があると判断した。そのため、高転移株と低転移株の転移能に相関する表現型を明らかにした上で、標的膜タンパクの機能的関与を検証すべく、計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、AKTP細胞集団から樹立した高転移株と低転移株の移植実験を継続し、転移能の差をもたらす表現型、およびその生物学的メカニズムの同定を行う。その際、ルシフェラーゼを発現させて肝臓内における腫瘍細胞の増殖を経時的に検出し、病理組織学的解析を行うことで線維性の間質反応を伴う転移性微小環境の形成能を比較する。高転移株と低転移株において、肝臓への生着やその後の増殖性に差が生じる過程について予備的知見をすでに得ており、令和4年度はその時点での比較解析を集中して行う。そして、高転移株や低転移株に対して標的膜タンパクの遺伝子発現制御や抗体投与実験を行い、転移における膜タンパクの機能的関与を検証する。
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