2021 Fiscal Year Annual Research Report
Discourse and Power over Politics and Religion in the Case of Modern Egypt
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21J10409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 友紀 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 近代エジプト / 政教関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずは、身分関係訴訟の管轄権をめぐる、国民的司法体制を代表する国民裁判所と伝統的なシャリーア裁判所、そして自治的裁判権が認められていた各非ムスリム宗教共同体の法廷との間の紛争や調整の実態を、法令集や判決資料集を用いて分析した。「国民国家エジプト」を志向し統一的司法の実現を望む者にとっては、多元的な司法権は制御しにくく厄介だった。しかし、近代エジプトは、多元的な司法権を法的に整備した後に国家の主導下で統一化していくという道をスムーズに進むことができなかった。その一因としてシャリーア的枠組みの「多元的社会エジプト」を残そうとする価値観が近代エジプトの基底にあったことを明らかにした。その成果の一部は、イスラーム地域研究・若手研究者の会で発表した。 次に、国民主権を基に成立した国会の登場が、政治と宗教の関係をどう変化させていったのかを明らかにする研究を行った。1923年に近代憲法が制定され翌年に国会が始動して以降、国会で議論の対象となった近代エジプトにおける政治と宗教に係わる問題の一つに、どの政治主体が、イスラーム諸学を修めた知識人、すなわちウラマーに権力を及ぼすことができるのかをめぐる問題があった。その問題を考察事例に、非王党派を中心とする国会勢力と国王・王党派との間で、イスラームは政治・公権力にとり重要であるという共通了解の下で宗教をめぐる権力の適切な調整が図られていったことを明らかにした。その成果は論文として来年度に発表されることが決まっている。 昨年末から今年の始まりにかけて、コロナ禍で中断していた主に新聞・雑誌資料の調査・収集をエジプトで再開した。その目的はある程度は達成できた。 以上より、1920年代・30年代の国民国形成期を中心に、近代エジプトの政教関係の一端を明らかにする研究を順調に進展させることができたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[研究実績の概要]で示した通り、研究計画を順調に進めることができている。特に、コロナ禍で中断していた資料収集を現地エジプトで行うことができたのが大きかった。これで、研究上の空白部分を大分埋めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度では、やっと開けてきたヨーロッパ諸国、特にイギリスで、外交文書の収集を行いたいと考えている。重要な資料はすでに所有しているので、それを行う以外は、専ら博論の執筆に取り組むつもりである。
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