2021 Fiscal Year Annual Research Report
車載ネットワークにおける電圧・遅延特性を用いた高精度・低コストな送信者識別手法
Project/Area Number |
21J10516
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大平 修慈 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 車載ネットワーク / 自動車セキュリティ / 情報セキュリティ / システムセキュリティ / Controller Area Network / 組込みセキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
車載ネットワークController Area Network (CAN) におけるスプーフィング攻撃に対して,メッセージの送信者を識別する手法(以降,送信者識別手法)が攻撃検知性能と適用可能性のバランスに優れている.暗号アルゴリズムに基づく認証手法は,既存のElectronic Control Unit (ECU) のソフトウェアアップデートや追加のハードウェアが必要となることから,実車へ適用する際に課題がある.一方で,物理層の特徴量に基づく送信者識別手法は,CAN信号の電圧や立ち上がり時間といった既存のECUが持つ物理的な特徴量を学習し,送信者を識別する.そのため,暗号アルゴリズムに基づく認証手法と比べ,物理層の特徴量に基づく送信者識別手法は既存のECUのソフトウェアアップデートや追加のハードウェアが必要ない.しかし,既存の送信者識別手法の識別性能は実車両において運用可能なレベルに達していない.そこで,本研究では物理層の特徴量に基づく送信者識別手法の精度を向上することを目的としている. 本研究は(1)「物理的特徴に基づく各IDSの設計・実装」,(2)「複数の物理的特徴に基づくIDSの設計・実装」の2フェーズによって計画されており,本年度は第1フェーズの遅延時間に基づく手法の改良と電圧値に基づく手法の実装に取り組んだ.具体的には,遅延時間に基づく手法を改良するために,Time-to-Digital Converter (TDC)と呼ばれる高い時間分解能で時間計測可能なハードウェアを実装し,識別性能向上を図った.その結果,TDCを用いた手法は従来手法よりも18.24%程度,識別性能が向上することが確認できた.今後は,電圧値と遅延時間を組み合わせてさらに識別性能の向上を見込む.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「物理的特徴に基づく各IDSの設計・実装」フェーズに取り組んだ. 「物理的特徴に基づく各IDSの設計・実装」フェーズは,遅延時間に基づく手法の改良と電圧ベースの送信者識別手法の実装に分かれており,前者についてはTDCを用いることで従来手法よりも18.24%程度,識別性能を改良することが確認できた.後者の電圧ベースの送信者識別手法の実装についてはScissionと呼ばれる電圧ベースの送信者識別手法を実装し,90%以上の識別性能が実現可能であることを確認した. 以上より,本年度の目標である「物理的特徴に基づく各IDSの設計・実装」フェーズまで完了しているため,計画通りおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
提案したTDCを用いた遅延時間ベースの送信者識別手法では識別性能が最大で99.67%となり,およそ0.3%で送信者の識別を誤ってしまうことがわかった.これは1000個のCANメッセージに対し送信者識別を行った場合,およそ3回程度識別を誤ってしまうことを意味する.また,30%程度のバス負荷のCANバスの場合,1秒におよそ1500個のCANメッセージがやりとりされる.そのため,提案した送信者識別手法では毎秒送信者を誤ってしまう.この問題を解決するために,時間ベースの手法と電圧ベースの手法を組み合わせたより識別性能の高い手法について今後検討する予定である.
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