2021 Fiscal Year Annual Research Report
コンデンシンI-RNAの液液相分離を介した分裂期染色体凝縮の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
21J10530
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 かざし 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | コンデンシン / RNA / M期染色体 / 液-液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物において細胞分裂期 (M期)に、核内に存在する長大な染色体DNAを凝縮させM期染色体を構築する「M期染色体凝縮」という過程は、娘細胞への正確な染色体の分配に必須である。M期染色体凝縮過程には、コンデンシンIとコンデンシンIIと呼ばれるタンパク質複合体が中心的な役割を担っている。また、M期染色体には重量比10%、約1000種類のRNAが局在しているが、その機能の多くは明らかとなっていない。本研究の目的は、コンデンシンIとRNAの液-液相分離 (LLPS)がどのようなメカニズムでM期染色体凝縮に寄与するかを明らかにすることである。 細胞をMonastrol処理によってM期に同調し、LLPS阻害剤の1,6-hexanediol (1,6-HD)処理を行い、コンデンシンIの局在を免疫染色によって解析した。その結果、濃度依存的、時間依存的にコンデンシンIのM期染色体上のシグナルが低下することを見出した。一方、1,6-HD処理はコンデンシンIの複合体形成に影響を与えなかった。また、1,6-HD処理を行なった後に洗浄し、RNase A存在下、または非存在下で培養しコンデンシンIのシグナルを免疫染色によって解析した。その結果、RNase A非存在下ではコンデンシンIの蛍光強度の回復が見られたのに対し、RNase A存在下では蛍光強度の回復が見られなかった。 M期に同調したHeLa細胞を破砕し、抗コンデンシンI抗体を用いてRNA免疫沈降を行い、コンデンシンIとRNAが結合するかを分光光度計によって定量した。その結果、コンデンシンIがRNAが細胞内で結合していることを見出した。また、アフリカツメガエル卵抽出液から精製したコンデンシンIとRNAを混合し、ゲルシフトアッセイをこなった結果、コンデンシンIの濃度依存的にバンドシフトが観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LLPS阻害剤の1,6-HDの処理時間、処理濃度に依存してM期染色体上のコンデンシンIのシグナルが減少することを見出した。また、1,6-HD処理はM期染色体形態に影響を与えることを見出した。さらに、1,6-HDによってM期染色体でのコンデンシンIのシグナルが減少し、1,6-HD洗浄後のM期染色体への局在の回復にはRNA必要であるということがわかった。以上より、コンデンシンIがLLPSのメカニズムでM期染色体に局在しうるということを支持するデータが得られているため、おおむね順調に進展していると考えられる。 抗コンデンシンI抗体を用いた、RNA免疫沈降により細胞内でコンデンシンIがRNAと結合することがわかった。また、精製コンデンシンIによるゲルシフトアッセイにより試験管内においてもRNAと結合することがわかった。さらに予備的な実験から、アフリカツメガエル卵抽出液から精製したコンデンシンIとRNAを混合することで液滴様の構造が観察された。 以上を総合して、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1,6-HDはLLPSの阻害剤として広く用いられている試薬であるが、両親煤性アルコールであるためLLPSの阻害の他にクロマチンの凝縮を引き起こすことが報告されている。そのため、免疫蛍光染色法では1,6-HD処理が抗体の抗原への接触を妨げられることが予想される。そこで、GFPタグやSNAPタグなどのタグをコンデンシンIに融合したタンパク質を細胞に導入し、1,6-HD処理による染色体の凝縮の影響を受けない実験系を用いてコンデンシンIのLLPSを解析する。 コンデンシンIがLLPSによってM期染色体に局在しうるという結果が得られている。そのため、試験管内で様々な条件下でコンデンシンIとRNAを混合し液滴の形成を解析する。 これまでにコンデンシンIが細胞内および試験管内でRNAと結合することを見出している。よって、今後はどの種類のRNAとコンデンシンIと結合しているかを、次世代シークエンスや定量的PCRを用いて、配列の特異性の有無を解析する。配列の特異性が認められる場合、LNAギャップマーと呼ばれるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて細胞内の特定のRNAのノックダウンを行い、表現型を解析する。
|