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2021 Fiscal Year Annual Research Report

難治炎症性疾患治療を目指した新規NLRP3インフラマソーム阻害剤の開発

Research Project

Project/Area Number 21J10592
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

関口 雄斗  東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2021-04-28 – 2023-03-31
KeywordsNLRP3 / インフラマソーム / 炎症性疾患
Outline of Annual Research Achievements

NLRP3は、内因性の生理活性物質や代謝物などの非感染性の広範な化学物質をストレスとして認識することでインフラマソームを形成し、炎症反応を惹起する。そのためNLRP3インフラマソームは、広範なストレスを受容する最も重要なインフラマソームとして位置付けられている。しかし、NLRP3インフラマソームの過剰な活性化は、多種多様な炎症性疾患の発症に関与することが明らかとなっている。申請者は臨床現場で汎用されているβ-ラクタム系抗菌薬の一種が、NLRP3インフラマソームの活性化を強力に抑制することを発見した。本研究では、抗菌薬A (特許関係のための仮称) のNLRP3インフラマソーム阻害剤としての分子基盤を確立すると共に、マウス病態モデルを用いた解析を行い、抗菌薬Aの炎症性・自己免疫性疾患の新たな治療薬としての妥当性を評価することを目的として研究を遂行した。
本年度の研究では、主に抗菌薬AのNLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスへの有効性を評価するための予備検討を行った。抗菌薬Aの投与方法の検討から、抗菌薬Aを餌に混合し、継続的に投与する方法において、マウス個体レベルにおけるNLRP3インフラマソームの活性化が顕著に抑制されることが判明した。また、関節リウマチのモデルとして汎用されているコラーゲン誘導性関節炎モデルなど、NLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスの構築も行った。さらに、抗菌薬AによるNLRP3インフラマソーム抑制機構に関わる分子を特定するため、抗菌薬Aの標的分子群の欠損細胞を樹立した。一方、モデルマウス構築の過程で、申請者は抗癌剤ゲフィチニブによって発症する重篤な間質性肺炎がNLRP3インフラマソームの過剰活性化が原因であることを独自に突き止めた (Sekiguchi et al., Cell Death & Disease, 12, 49, 2021)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は、抗菌薬AのNLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスへの有効性を評価するための予備検討を行った。まず、抗菌薬Aを餌に混合して投与する実験系を構築した。その結果、抗菌薬Aは経口投与によっても、優れたNLRP3インフラマソーム阻害活性を示すことが判明し、実際の治療においても自宅で服薬するなど、簡便な方法で炎症性疾患の治療に利用できる可能性が考えられた。
また、NLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスの構築も行った。具体的には、細菌感染を模倣するエンドトキシン誘導性肺炎モデル、関節リウマチのモデルとして汎用されているコラーゲン誘導性関節炎モデルを構築した。エンドトキシンによる肺炎モデルにおいては、口腔咽頭吸引法により気管内に投与する実験系を構築し、肺炎の誘導に成功した。また、コラーゲン誘導性関節炎モデルは、Ⅱ型コラーゲンをアジュバントと共にマウスの尾部に皮下投与することによって関節炎が誘導されることが確認でき、組織染色により関節破壊を評価する系も構築できた。さらに、抗菌薬AによるNLRP3インフラマソーム抑制機構に関わる分子を特定するため、抗菌薬Aの標的分子群の欠損細胞を樹立した。
一方、NLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスを構築する過程で、申請者は、抗癌剤ゲフィチニブによる致死的な間質性肺炎が、NLRP3インフラマソームの過剰活性化によって惹起されるという重要な知見を新たに見出した (Sekiguchi et al., Cell Death & Disease, 12, 49, 2021)。
以上の結果は、抗菌薬Aを難治性炎症性疾患治療に向けた新規NLRP3インフラマソーム阻害薬として開発するという点において、極めて大きな成果であると考えている。よって、当該年度に遂行した、抗菌薬AのNLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスへの有効性を評価するための解析は順調に進展したと判断した。

Strategy for Future Research Activity

今年度の研究によって、抗菌薬Aの最適な投与方法が構築されたことに加え、NLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスの構築に成功した。次年度は、今年度構築したエンドトキシンやゲフィチニブが誘導する肺炎やコラーゲン誘導性関節炎といった数種類のNLRP3インフラマソーム関連疾患モデルマウスにおける、抗菌薬Aの病態改善効果について、組織解析を行うことで詳細に検討する予定である。一方で、抗菌薬AがNLRP3インフラマソームを抑制する詳細な分子機構は未だ明らかにできていない。次年度においては、今年度樹立した、抗菌薬Aの標的分子群の欠損細胞を用いて、抗菌薬AのNLRP3インフラマソーム阻害作用に直接的に関わる分子を明らかにすることを目指す。また、ビオチン標識した抗菌薬Aを作製し、質量分析計を用いた解析によって抗菌薬Aに直接結合するタンパク質を特定することで、抗菌薬Aの直接的なターゲットを探索・同定する予定である。抗菌薬AによるNLRP3インフラマソーム阻害作用に直接的に関わる分子を特定した後、それら分子群の機能解析を行うことで、最終的には抗菌薬AがNLRP3インフラマソームを阻害する詳細な分子機構を解明する。特に、NLRP3インフラマソームの活性化に深く関与する細胞内イベントであるミトコンドリア障害に着目して解析を進め、抗菌薬AのNLRP3インフラマソーム阻害剤としての有用性を裏付ける分子基盤を確立することを目指す。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (4 results)

  • [Journal Article] The polypeptide antibiotic polymyxin B acts as a pro-inflammatory irritant by preferentially targeting macrophages2022

    • Author(s)
      Kagi Tomohiro、Naganuma Rio、Inoue Aya、Noguchi Takuya、Hamano Shuhei、Sekiguchi Yuto、Hwang Gi-Wook、Hirata Yusuke、Matsuzawa Atsushi
    • Journal Title

      The Journal of Antibiotics

      Volume: 75 Pages: 29~39

    • DOI

      10.1038/s41429-021-00490-7

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 抗腫瘍チロシンキナーゼ阻害薬による致死性副作用発症メカニズムの解明2022

    • Author(s)
      関口 雄斗, 高野 紗彩, 鍵 智裕, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
    • Organizer
      日本薬学会第142年会
  • [Presentation] 分子標的薬ゲフィチニブによる新規がん細胞浸潤抑制機構2021

    • Author(s)
      関口 雄斗, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
    • Organizer
      日本生化学会東北支部第87回例会
  • [Presentation] 分子標的薬ゲフィチニブによる新規がん細胞浸潤抑制機構2021

    • Author(s)
      関口 雄斗, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
    • Organizer
      第20回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム2021
  • [Presentation] ゲフィチニブによる致死性副作用発症の新たなメカニズムの解明2021

    • Author(s)
      関口 雄斗, 鍵 智裕, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
    • Organizer
      第60回日本薬学会東北支部会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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