2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J10640
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 鮎子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 機能性反強磁性体 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性反強磁性体の薄膜を微細加工することにより、スピン吸収測定用面内スピンバルブ素子を作製した。実験手法としては、電子線リソグラフィやイオンミリング、電子線蒸着を行い、細線加工後も抵抗率の温度依存性が金属的な振舞いを示すことを確認した。この素子を用いて線幅と厚みが数10 nmスケールの細線内のスピン蓄積を調べた。スピン吸収測定とは、強磁性体から非磁性体中に電荷電流を流した際、拡散したスピン流の一部が対象物質に吸収されることを利用した測定法である。これによりスピン拡散長を求めることが可能になる。また、吸収されたスピン流は逆スピンホール効果により電流変換され、この電圧信号を測定することにより変換効率であるスピンホール角も求まる。両者の温度依存性をプロットすることにより、物質中のスピン緩和機構に対する理解を深めることが出来る。代表的な機構としては、スピン緩和時間が電子散乱時間に比例するエリオット・ヤフェット機構と、反比例の関係となるデャコノフ・ペレル機構があげられる。このうち、金属中ではエリオット・ヤフェット機構による緩和が支配的となる場合が多いとされる。当該機構では金属中の不純物などによる散乱ポテンシャルに電子スピンが散乱され、スピンの向きが反転して緩和する。本研究で用いた金属反強磁性体もエリオット・ヤフェット機構の寄与が確認された。一方で、スピン信号に対し熱の効果が大きく重畳するため、現在慎重に解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該物質のスピンバルブ素子作製に当たり、微細加工時に抵抗率の温度性が著しく変化するなどの問題があった。これに対し加工手法にイオンミリング法を用いることにより、細線加工後も金属的な振舞いが保持されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
非局所スピンバルブ信号等が物質の相転移に伴いどのように変化するか詳細に調べる。
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