2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグスセクターで探る非摂動解スファレロンの性質~加速器と重力波による検証~
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21J10645
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 正法 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 電弱相転移 / 拡張ヒッグス模型 / スファレロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,強い電弱1次相転移を実現する拡張ヒッグス模型の具体例として,標準模型にアイソスピン二重項スカラー場を追加したTwo Higgs doublet model (THDM) に注目し,電弱相転移と電弱スファレロンの性質の解析を行った.素粒子の標準模型はLarge Hadron Colliderをはじめとする加速器実験の結果をよく説明する理論であるが,宇宙の物質と反物質の非対称性などのいくつかの宇宙論的現象が説明できないことが知られている.この宇宙の物質と反物質の非対称性を解決する有望なシナリオとして,電弱バリオン数生成が注目されてきた.この電弱バリオン数生成では,電弱相転移が1次相転移である必要がある.また,電弱1次相転移の後でバリオン数を破る真空の遷移過程であるスファレロン過程が脱結合している必要があり,この条件はしばしばスファレロン脱結合条件と呼ばれる.このスファレロン脱結合条件を評価する際に重要となるのが電弱スファレロンのエネルギーであり,本研究では電弱スファレロンの性質に焦点を当てる.
本年度での研究では,電弱バリオン数生成を実現できる拡張ヒッグス模型の一つであるTwo Higgs doublet model (THDM) に焦点を当て,THDMが持つ特徴的な加速器現象論や宇宙論に対する予言について解析を行った.特にヒッグス3点自己結合に対する予言と,電弱相転移由来の重力波に関する解析に注目し,THDMのどのようなパラメータ領域が将来の加速器実験や重力波観測で探られるのかを明らかにした.また,THDMにおける電弱スファレロンのエネルギーがモデルのパラメータにどのように依存するのかを解析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では拡張ヒッグス模型におけるヒッグス3点結合に対する予言や電弱相転移の解析を行った.特に,宇宙のバリオン数非対称性問題の解決方法として有力視されている電弱バリオン数生成を実現できる拡張ヒッグス模型であるTwo Higgs doublet modelに焦点を当て,加速器実験や重力波観測に対するTwo Higgs doublet modelの特徴的な予言を解析した.また,電弱スファレロンのエネルギーに関する解析も行い,本研究の目的である電弱スファレロンの性質を実験的に探る方法の解明に向けた予備研究を順調に進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では,Two Higgs doublet modelなどの拡張ヒッグス模型に焦点を当て,電弱相転移やヒッグス3点自己結合の解析を行った.今後の研究の推進方策としては,電弱バリオン数生成の実現可能性を決める重要な条件であるスファレロン脱結合条件を,本年度で解析した電弱スファレロンの性質を用いて精密に解析する.そして,スファレロン脱結合条件が加速器現象論や宇宙論的観測に対してどのような意味を持つのかを議論する.
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