2021 Fiscal Year Annual Research Report
21世紀型公共図書館が与えるインパクトの評価手法の構築
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21J10661
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
五十嵐 智哉 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 公共図書館 / 図書館評価 / 社会分断 / 格差 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,(1)公共図書館において近年行われた図書館評価を基礎とした公共図書館が地域に与えるインパクトの考察,(2)社会分断を克服する場としての公共図書館活動の文献レビュー,(3)先進的な公共図書館を対象としたイベントの分析の3つの研究を行なった。 (1)の研究では,近年試みられた公共図書館におけるインパクト評価の評価項目を基礎とし,公共図書館が与える潜在的なインパクトについて文献を調査し議論を行った。本研究はインパクト評価にを議論するための基盤となるものである。 (2)の研究では,公共図書館がその活動を通して社会分断の克服にどのように貢献しているかを,文献調査により明らかにした。本研究は,公共図書館の機能を社会分断の克服という観点から整理したことで,社会分断を克服する空間としての公共図書館を議論するための研究のさらなる発展に寄与するものである。 (3)の研究では,公共図書館で開催されたイベントの分析を行った。予定していたダイクマン図書館(ノルウェー,オスロ)に加え,ヘルシンキ中央図書館Oodi(フィンランド)を対象として研究を行なった。両館とも,多様なイベントを積極的に開催している公共図書館である。社会分断の克服のためには,図書の貸出やコンピューターの設置などの伝統的,恒常的なサービスに加えて,新たなサービスも重要となっている。多様なイベントはその代表的なものであり,公共図書館の中核的なサービスとして期待されている。本研究は公共図書館イベントのさらなる普及やイベントの評価に関する研究,さらには図書館員に対する教育にも寄与するものである。 これらの成果の一部は国際学会および学術雑誌において発表・出版済みである。また,残りの成果も受理済みであり,本研究の成果は広く公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イベント分析について,当初対象として計画していたDeichman(ノルウェー)に加え,ヘルシンキ中央図書館Oodi(フィンランド)も対象として研究を行なった。公共図書館が発展する北欧諸国のなかでも評価が高く,また多様なイベントも積極的に開催しているヘルシンキ中央図書館を対象とすることで,公共図書館イベントについてより幅広い視点から理解をすることができるため,追加して分析を行なった。公共図書館におけるイベントは,社会分断の克服にも強く寄与しているものである。分析対象館の追加により当初の研究計画から遅れが生じているものの,複数の図書館を対象とし,幅広い視点から理解することは,本研究課題の達成にも寄与するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
市民を対象としたアンケート調査は予定通り行う予定である。ただし,新型コロナウィルス感染症の影響による渡航制限により,現地を訪問することは困難であるため,現地の調査会社にアンケートの配布と回収を依頼する予定である。すでに現地の研究協力者とアンケート項目と依頼する調査会社の検討を開始している。インタビュー調査は,同様の渡航制限により実施が困難であると判断した。ただし,現地の研究協力者からの情報および政策や図書館が発行する年報,図書館長による記事などによりインタビュー調査で想定していたのに足る十分な情報を得ることができると見込まれている。
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