2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J10712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 航平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 結晶構造探索 / クラスター展開法 / 組合せ最適化 / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、decision diagram (DD)と呼ばれるデータ構造を始めとした組合せ最適化の分野における発展的な手法を用いて、効率的な結晶構造列挙手法の開発を行うと共に、結晶構造の探索可能範囲を広げ、第一原理計算による構造探索手法を発展させることを目指す。2021年度は、結晶構造を効率的に絞り込む手法として、DDとクラスター展開法を組み合わせた手法を検討した。本手法では、クラスター展開の下で結晶構造の相関関数から物性の予測を行い、DDによって効率的に特定の相関関数の値をもつ結晶構造だけを抽出する。置換型の不規則系の第一原理計算では、Special Quasirandom Structure (SQS) と呼ばれる特殊な構造を用いることがあるが、本手法を用いることでSQSとして望ましい相関関数をもつ結晶構造だけを抽出し、既存の探索手法では見つからなかった範囲でSQSの探索を行った。結晶構造探索に対して組合せ最適化の手法は強力な手段であるが、物質系ごとに適切な制約を見つける必要があった。そこで、DDとクラスター展開を組み合わせることで、一般的に低エネルギー構造の探索する手法も検討した。その結果、合金系や有限個の原子からなるクラスター系に対して、相関関数の範囲を限定した場合、探索効率とエネルギー予測精度を両立できることを明らかにした。探索効率を保ちつつクラスター展開による予測モデルをより高精度にする点に関しては次年度に引き続き取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、材料構造探索を情報科学の観点から効率化するという、幅広い学問知識を必要とする内容である。結晶構造探索に対して組合せ最適化の手法は強力な手段であるが、物質系ごとに適切な制約を見つける必要があった。本研究では現在までに、クラスター展開法とdecision diagram を組み合わせることで、汎用的な構造探索手法を提案し、その応用例として今まで見つけられていなかった範囲で厳密にspecial quasiramdom structure と呼ばれる不規則相を近似する特殊な構造を報告した。これらの理由により、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、decision diagram(DD)を始めとする離散アルゴリズムを駆使して、第一原理計算による構造探索手法の確立を目指している。そのために、以下の2項目を実施する。 (1)クラスター展開を利用したDDでの結晶構造探索、(2)DDとベイズ最適化を併せた結晶構造探索・結晶構造の効率的なサンプリング 2022年度は、各研究項目について、以下の方策で研究を実施する。 (1)構造探索を効率的に実行するアルゴリズムとして線形計画法といったDD以外の手法を検討する。 (2)前年度に開発した原子配置のクラスター展開を表現するDDを探索空間として、ベイズ最適化や重点サンプリングにおける候補生成の部分を高速化し、安定である可能性が高い結晶構造を確率的に探索する。そして、開発した手法を酸素欠陥を含むような複雑な結晶構造に対して適用する。
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