2021 Fiscal Year Annual Research Report
カニ星雲のサブ秒角スケールでの精密X線分光による電磁流体加速機構の解明
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21J10842
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
金丸 善朗 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | X線天文学 / 粒子加速 / カニ星雲 / パルサー星雲 / 超新星残骸 / X線CCD |
Outline of Annual Research Achievements |
カニ星雲は時間とともに形態の変わっていく天体であるため、2021年度は形態変化のデータ解析に取り組んだ。 解析には、X線帯で最も空間分解能の高い Chandra 衛星のデータを使用した。 Chandra 衛星では、X線CCD検出器とマイクロチャンネルプレート検出器を使って、15年を超える長期間カニ星雲を観測している。 その間、回折格子の使用の有無や、データ取得範囲の調整など、様々な条件下でデータ取得が行われてきた。 そこで、はじめに全ての観測データを精査し、どの程度データ解析に利用できるかをまとめた。 その後、形態解析に適した観測データからカニ星雲の表面輝度マップを作成して、その時間変化を解析することで、カニ星雲に見られる複数の特徴的な構造とその接線速度を調べた。 なかでも、南側ジェットは大きく変化し続けており、ジェット先端の進行方向が急角度で変化したこと、ジェットの折れ曲がり構造が下流へと移動したことを示した。 その他、ジェットの速度は上流から下流にかけて光速の数十%から数%へと変化していることが分かった。 また、約15年でジェットが30秒角ほど延伸したことを明らかにした。過去のX線天文衛星の観測を含めた30年超の期間のデータ解析の結果から考えても、このジェット延伸の速さだと100年程度で現在のジェットの長さに到達してしまう。 すなわち、カニ星雲が誕生した約1000年前から一貫して同じ速さで延伸していなかったことを示している。 これらの成果は、国内の学会・研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、 Chandra 衛星の 15 年を超える観測データの精査・選別と、X線帯における長期間の形態変化のデータ解析を行い、得られた結果を国内の学会・研究会で発表した。本研究の目指す空間的に分解した精密X線分光解析を遂行する上で形態変化の定量化は重要であり、おおむね順調に進行したといえる。また、分光解析のための計算機の環境構築を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究で得られた長期間変動のデータ解析の結果を投稿論文として出版する。その後、観測データ取得時の状況を計算機上で模擬することで CCD の応答変化を見積もる。その結果を用いたX線分光解析を行うことによって、衝撃波下流の加速粒子のエネルギー分布に空間毎に制限を付け、電磁流体力加速機構の解明に迫る。
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