2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J10860
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀岡 健太郎 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 共鳴 / 半古典解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は 2 つの成果をあげた.1 つ目はシュタルクハミルトニアンの共鳴の複素吸収ポテンシャル法による特徴づけの証明である.シュタルクハミルトニアンは典型的なシュレーディンガー作用素に外部電場を表す線形のポテンシャルを足したもので数学的取り扱いが難しくなる.複素吸収ポテンシャル法は共鳴を複素吸収ポテンシャルを付加した作用素の離散固有値の極限として特徴づけるものである.私が以前に導入した錐集合の外での作用素の複素変形を用いて証明した.作用素の複素変形により共鳴を非自己共役作用素の固有値として特徴づけて調べた.本結果は査読あり雑誌に投稿し出版された. 2 つ目は離散シュレーディンガー作用素の固有関数の指数減衰に関するものである.まず半古典の連続シュレーディンガー作用素を半古典パラメータに比例する幅で離散化して得られる離散シュレーディンガー作用素を考察した.この設定でポテンシャルから定まるフィンスラー計量を用いて固有関数のアグモン評価を示した.フィンスラー計量はリーマン計量の一般化である.ただし Klein-Rosenberger (2008) が違う議論でポテンシャルの極小点の特別な場合に同様のことを示していた.また半古典でない標準的設定での離散シュレーディンガー作用素の固有関数の遠方での非等方的な最良な指数減衰も示した.証明はトーラス上の擬微分作用素の理論を用いる. また量子カオスについては論文を読み考察を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共鳴の研究では非自明で意義のある結果が得られた.量子カオスの研究でははっきりした結果にはいたっていないが考察を進めた.離散シュレーディンガー作用素についても成果があがった. 以上の理由によりおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
量子カオスの研究は簡単ではないが研究を進めて成果をあげたい. 今年度の研究によりポテンシャル井戸が生成する離散シュレーディンガー作用素の共鳴の半古典極限とフィンスラー計量の関連を調べるという問題があらわれた.この方向性での研究も検討している.
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