2021 Fiscal Year Annual Research Report
新奇構造を有するRNAウイルス複製酵素の機能・普遍性の解明
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21J10873
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 悠斗 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | RNAウイルス / RdRp / マイコウイルス / 糸状菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では分割型RdRpの機能と普遍性を明らかにし、その実態について迫ることを目指している。初年度の取り組みとして、①分割型RdRpの機能解析に必要な材料の準備と実験系の構築、②研究室が保有する独自のウイルス配列データベースからの分割RdRpの探索の2点に取り組んだ。 ①に関しては、分割型RdRpの組み換えタンパクを利用したRdRp活性の検出を計画していたため、まず組み換えタンパクの作成に必要な分割型RdRpの塩基配列のクローニングを行った。分割型RdRpを有するRNAウイルスであるAfuNV2に関して、その配列のクローニングを行い、配列を取得した。その後、取得したAfuNV2配列を用いて、RdRp活性検出系の構築に取り組んだ。 ②に関しては、所属研究室が保有する糸状菌株ライブラリーからこれまでに検出されたRNAウイルス配列を対象に分割型RdRpの探索を行った。その結果、深海分離糸状菌から検出されたAtenNV1が分割型RdRpを有することが示された。AtenNV1が保有する分割型RdRpについて精査すると、AtenNV1の分割型RdRpでは既知の分割型RdRpとは異なる位置で分割が生じていることが分かった。このことは分割型RdRpの分割様式には多様性があることを示している(以下、従来型をType1、AtenNV1の分割型RdRpをType2と呼称)。Type1を保有する既知のウイルスは全てNarnaviridae科に属し、単一のクレードを形成する。系統解析の結果、AtenNV1もNarnaviridae科に属することが示されたが、Type1保有ウイルスとは別のクレードに位置していた。このことから、Type1とType2の異なる位置でのRdRpの分割はNarnaviridae科において、独立的に生じたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では分割型RdRpの機能と普遍性の解明を目的としており、本年度はその両方の研究を進めることができた。特に普遍性に関しては、従来型とは異なる分割位置を持つType2分割型RdRpを見出し、RdRpは異なる位置でも分割されうるのかという分割様式の観点から、RdRp分割現象の普遍性の一端を示すことができた。また、機能解析に関しては、、RdRp活性の評価に必要な分割型RdRp保持ウイルスの塩基配列の取得を終了させ、次年度活性を評価するための基盤を構築することができた。当初予定していた分割RdRpの前半部分と後半部分の相互作用解析は、活性のある組み換えタンパクの作製に手間取っており行うことができなかったが、次年度に予定していた分割型RdRpの探索(普遍性の解析)が予想外に進展していることから全体としてはおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も分割型RdRp配列の探索と分割RdRpの機能解析を進める。探索に関しては、公共データベース上に存在するRNAウイルス配列を材料に進め、Narnaviridae科以外にも分割型RdRpを有するウイルスが存在するのかを明らかにすることを目指す。機能解析に関しては、昨年度から取り組んでいるRdRp活性の検出系の構築を進める。当初予定してた活性の検出系では偽陽性が生じることが判明したため、活性系に反応の鋳型として導入する鋳型RNAの精製系を工夫するなど細かい調整を行うことで問題の解決を目指す。それが上手くいかない場合は組み換えタンパク質による活性の検出ではなく、感染性クローンを用いた方法などに方針を転換する。
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