2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J11019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
月見 友哉 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / ゲノム科学 / 大腸菌 / 哺乳類―微生物共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの腸内に生息する細菌は,細菌間および細菌-宿主間の相互作用を介して複雑な生態系を構築しており,近年では疾患の予防・治療標的になっている.細菌は株ごとに生理機能が異なるが,腸内細菌研究の多くは属レベルの組成情報に基づいている.本研究は腸内細菌の腸内環境定着メカニズムをゲノムレベルで解明することを目的とする. 昨年度までに大腸菌ミューテーター株を無菌マウスに移植すると,araC,gatC,malI,melR,ebgA,ebgR,ygjIの7遺伝子に変異が蓄積することが明らかになっていた.ygjIを除く6遺伝子は糖代謝関連遺伝子であったことから,「腸内に豊富に存在する栄養素代謝を最適化する変異が蓄積する」と仮説を立てた.この仮説を実証するため,2021年度は6遺伝子のうち特に変異率の高かったaraC・gatC・malIが欠損した株(以下多重欠損株)を作成し,腸内にて変異が蓄積すると報告のあるgatC遺伝子が欠損した株とのin vivo競合培養試験を実施した.本試験は糖が豊富な餌を摂取するマウス群(Sugar-rich群)と,糖が豊富でない餌を摂取するマウス群に対して実施した.結果として,Sugar-rich群でのみ多重欠損株は10の6乗倍以上優勢になり,マウス腸内の糖濃度はSugar-rich群で有意に高かった.以上の結果は,腸内に豊富に存在する糖組成によって変異が選択されるとする仮説を支持するものである.今後はこれらの遺伝子に変異が蓄積する分子メカニズムの解明を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異遺伝子スクリーニングで検出された遺伝子が実際に腸内定着に寄与することを動物試験によって示すことができた.また,マウス腸内のメタボローム測定によって特定の遺伝子変異が選択される分子メカニズムを解明するための基礎データを取得することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の結果を踏まえて以下の調査を進める. ①大腸菌におけるaraCおよびmalI変異が選択されるメカニズムの解明 araC・malIはそれぞれアラビノース,マルトースの糖代謝を制御する遺伝子である.しかし,実験に使用した大腸菌株はアラビノースを資化できず、マウス腸内のマルトースは非常に低濃度であった.現時点ではaraC・malI欠損株では腸管ムチン層の構成物質であるN-アセチルグルコサミン代謝が亢進していることを示唆する結果を得ている.そのため,ムチン代謝とこれらの遺伝子の関係性をin vitroの培養実験などを通して検証していく. ②乳酸菌における変異遺伝子が選択される分子メカニズムの解明 無菌マウスを用いた乳酸菌の変異遺伝子スクリーニングにて,ガラクトース代謝に関連する遺伝子に変異が蓄積していた.この遺伝子変異が実際に腸内環境で有利に働くかを検証するため、野生株とのin vivo競合培養試験を実施する.
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