2021 Fiscal Year Annual Research Report
Computational evaluation method for picosecond laser skin treatment
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21J11059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下条 裕 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ピコ秒レーザー / 計算的評価 / 皮膚組織 / 良性皮膚色素性病変 / メラノソーム / メラニン / 光照射条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,皮膚科・形成外科で適用拡大が期待される新規ピコ秒レーザー治療に対し,その作用機序の解明と計算的評価手法の構築を行う.治療効果は,病変メラノソームが含包されるメラニンの光吸収により破壊されて生じるため,組織,細胞・細胞小器官,分子の各階層に対してピコ秒パルス光による生体作用を解析する.本年度は主に,1.ピコ秒パルス光による病変メラノソーム破壊に必要となる閾値フルエンスの取得,2.入射フルエンスを計算するための数理モデル構築を行った. 1.ピコ秒パルス光による病変メラノソーム破壊に必要となる閾値フルエンスの取得 臨床利用されている波長755nmのピコ秒パルス光を使用し,照射条件を変化させて光照射した際のメラノソームの粒径測定と走査型電子顕微鏡観察により,病変メラノソームの破壊に必要となるピコ秒パルス光の閾値フルエンスを取得した.他波長のパルス光照射に対する文献値との比較より,求めた閾値フルエンスの妥当性を評価した. 2.入射フルエンスを計算するための数理モデル構築 取得した閾値フルエンスとヒト皮膚組織の光学特性値に基づく,入射フルエンスを計算するための数理モデルを構築し,病変深さおよびスキンタイプに応じた入射フルエンスを求めた.入射フルエンスは病変が深く分布するにつれて増加し,スキンタイプ間では色調が濃くなるにつれて必要となる入射フルエンスは増加した.計算値は臨床研究で安全性と有効性の高い治療成績を示した光照射条件に含まれた.ピコ秒パルス光による生体作用に基づいて入射フルエンスを設定するための数値指標を提供することが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピコ秒パルス光による組織および細胞・細胞小器官スケールでの生体作用を実験的に解析し必要となる物理パラメータを取得するとともに,臨床研究の論文公開データとの比較から計算的評価手法の有用性を示すデータが一部得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,主に下記2つの項目に取り組む. 1.病変メラニンによるピコ秒パルス光の応答を考慮した治療効果の定量評価 ピコ秒パルス光によるメラノソーム破壊の機序を解明するために,ピコ秒パルス光の高パワー密度に着目した病変メラニンの非線形吸収とそれに伴う物理現象を考慮した数理モデルを構築し,その妥当性をメラニン試料に対する光照射実験にて検証する.計算結果の実験結果に対する整合性が低い場合,ex vivo実験結果を用いた機械学習等の計算科学を導入し,シミュレーションの精度向上を図る.計算に多大な時間を要し,実験を効率良く進めることが困難な場合はGPGPUによる並列計算の導入を適宜検討する.提案モデルを用いて,光照射条件に応じた病変の光吸収量,温度分布などを計算し,これまでに取得した病変破壊閾値や熱損傷閾値等のパラメータを基に,皮膚組織内の治療範囲や損傷範囲を算出する.これにより,光照射条件に応じたピコ秒レーザー治療効果の定量を可能にする. 2.臨床研究の論文公開データとの比較 ヒト皮膚仮想モデルを対象として,被試験者のばらつきを考慮した計算により治療効果を定量する.計算結果と臨床研究の論文公開データを皮膚損傷分布などの観点から比較し,光照射条件と安全性・有効性の関係性を評価する.さらに,高効率に治療効果を得るために,治療範囲を最大化し損傷範囲を最小化するような光照射パラメータを探索する.これにより,ピコ秒レーザー皮膚治療の治療性能を向上させるための光照射パラメータを設計することを目指す.以上により,ピコ秒レーザー皮膚治療の安全性・有効性評価における計算的手法の有用性を実証する.
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Research Products
(9 results)