2021 Fiscal Year Annual Research Report
The change in flow and sediment regimes : the cause of forest management and geographical characteristics of river basins
Project/Area Number |
21J11113
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武藤 裕花 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 山地河川流域 / 地質特性 / 人工林管理 / 流量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,地質特性が異なり,森林の占める面積割合が高い5つのダム集水域(以下,ダム流域)を対象とし,GISを用いて山地表面形状の解析を行うとともに,各流域を含む自治体の統計を調査し,人工林管理状況を分析した.その結果,傾斜が緩やかで谷尾根密度が低い第四紀の火山岩の流域を含む自治体では,間伐面積が2010年以降やや増加傾向であるのに対し,その他4流域を含む自治体では特に2011年以降急減しており,地形特性と間伐面積との対応関係が示唆された. また,各流域における月別流量および複数期間の先行降雨量の相関関係を分析した上で,先行降雨量の変化に対する月別流量の変化度合いも統計的に分析した.流量への人工林の荒廃の影響は,降水量以外の要因によって低水期の流量が減少する一方で,高水期の流量が増加するという傾向(流量変動のバランス変化)として現れると想定した.その結果,新第三紀以前の火山岩の流域と西南日本内帯に位置する中生界の流域において,流量変動のバランス変化が示された.この結果から,傾斜や谷尾根密度が大きく,かつ流域の保水力が比較的小さいという地質,地形特性に加え,降水量の年々変動の振れ幅が比較的小さいという特徴を有する流域において,人工林の荒廃が流量に及ぼす影響が大きいことが示唆された. さらに,上記分析で流量変動のバランス変化が示された寺内ダム流域では,水文モデルSWAT(Soil and Water Assessment Tool)を用い,土地被覆変化が流量に及ぼす影響を分析した.一部の結果からは,流量への人工林の荒廃の影響が示唆されたものの,その影響は大きいとはいえず,不明瞭であった.SWATを用いた分析手法は,さらなる改善を検討している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初の計画では,124のダム流域を対象とした統計的な分析を行う予定だった.しかし予定を変更し,5つのダム流域に対象を絞って分析を行った.これは,流域面積の違いや人為的な流量操作の影響を排除し,地質特性の違いと流量の関係性を明瞭に抽出するためである.また,令和3年度には衛星画像を用いて対象流域内の人工林管理状況の調査を行う予定だったが,この分析は対象流域を含む自治体から入手した統計資料を分析することで代替した. 上記の計画変更があったものの,令和3年度に計画していた対象流域内の人工林管理状況の調査,山地表面形状の調査,流量と降水量の関係性に関する統計的な分析を遂行することができた.さらに,令和4年度に予定していた,水文モデルSWATを用いた分析も,令和3年度中に途中まで実施することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,1)令和3年度に実施した分析の手法の改善,2)土砂動態の変化の分析を実施する. 1)に関してはまず,対象流域を含む自治体から森林簿を入手するとともに,聞き取り調査を実施することで,対象流域内の人工林管理状況をさらに詳細に分析する.また,水文モデルSWATのキャリブレーション手法等の改善を行った上で,SWATを用いた流量変化の分析を再実施する. 2)に関しては,ダムの堆砂量データを用いて土砂輸送量の経年変化を統計的に分析するとともに,SWATを用いた計算も実施する予定である.
|
Research Products
(5 results)