2021 Fiscal Year Annual Research Report
胚動脈血管内皮細胞が飛び出して造血幹細胞に分化する仕組みの解明
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21J11172
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
玉置 隼也 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヒストン脱メチル化 / LSD1 / エピジェネティクス / 造血幹細胞 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンの脱メチル化酵素であるLSD1は、エピジェネティックな遺伝子発現の制御を介して個体発生の様々な局面で機能を発揮する。LSD1にノンセンス変異を持つゼブラフィッシュ変異系統は、表現型解析により既知の表現型の他に造血幹細胞数の減少が認められていた。今年度は、このLSD1変異系統の詳細な解析を進めた成果を国内学会で報告し、国際誌投稿するに至った。以下に得られた研究内容を示す。 まず、LSD1の造血幹細胞発生における作用点の特定を行った。造血幹細胞の前駆細胞である造血性内皮細胞は丸くなることで他の内皮細胞から遊離し血管内へ飛び出す(=内皮造血転換)。この飛び出した細胞が成熟・増殖を繰り返すことで多能性を持つ造血幹細胞が成立する。最初に蛍光免疫染色や細胞移植実験から、細胞死や細胞増殖の異常が造血幹細胞数の減少につながるのではないと判明した。そこで、分化に注目した。内皮造血転換最中の造血幹細胞のライブイメージングを行うと、LSD1変異系統では他の血管内皮細胞から遊離し血管内へ飛び出す細胞が減少していることがわかった。この局面におけるLSD1の標的遺伝子を探索のため、内皮造血転換最中の細胞を集めて遺伝子発現を解析をおこなったところ、野生型に比べてLSD1の変異体では前駆細胞である内皮細胞の遺伝子発現が強く残っていることが明らかとなった。これは、LSD1が前駆細胞である血管内皮細胞の性質を抑制することが内皮造血転換に重要であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ヒストンの脱メチル化酵素LSD1の変異系統の詳細な解析を進めた成果を国内学会で報告し、国際誌に投稿するに至った。また、次年度ではLSD1の機能制御のメカニズム解明を行う予定であるが、この準備としてLSD1と共に機能することが予想される因子の遺伝子破壊ゼブラフィッシュ系統の作製にも成功しており、おおむね当初の予定通りに計画が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立した造血幹細胞発生のライブイメージングアッセイや作製したLSD1関連因子の遺伝子破壊ゼブラフィッシュ系統を用いることで、LSD1機能のメカニズム解明を行う予定である。また、抗体が存在しないLSD1のタンパク質に注目した生化学実験を行うために作製したゼブラフィッシュLSD1のタグノックイン系統も活用して、遺伝子発現やタンパク質、そして細胞形質といった複数の観点からLSD1機能のメカニズム解明を進めていく予定である。
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