2021 Fiscal Year Annual Research Report
超高強度電磁場と相対論的高渦度が織りなすクォーク物質物性の探究
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21J11298
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島崎 拓哉 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | クォーク物質 / フロッケ理論 / 汎関数くりこみ群 / θ真空 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果は大きく二つある。 まず第一に時間変動する電磁場下のカイラルアノマリーを研究した。カイラルアノマリーはクォーク物質物性の研究の至る所で現れる。本研究では時間周期系に対するフロッケ理論に基づき、1+1次元系のカイラルアノマリーを研究した。質量ゼロのワイルフェルミオンの場合、アノマリー関係式に現れる物理量が解析計算可能となる。具体計算に基づき、カイラルアノマリーが有効ハミルトニアンではなく、基底変換のためのユニタリ変換から現れることを陽に示した。一方で有限の質量を持つディラックフェルミオンの場合は解析計算が不可能なので、高周波展開によってカイラルアノマリーを議論した。その結果、高周波極限ではカイラリティ生成によってアノマリー関係式が満たされ、有限質量効果が抑制されることを見出した。超高周波の電磁場下でカイラルアノマリーを議論した本研究は、1+3次元系のカイラルアノマリーやカイラリティ生成の研究に繋がっていく。 そして第二にθ真空への汎関数くりこみ群の適用可能性を研究した。汎関数くりこみ群は微分方程式に基づく量子論の厳密な定式化である。ただしθ項のようなトポロジーを取り扱うためには、元の理論が定義されている多様体を変形する必要がある。このことを円周上の量子力学を用いて議論した。また汎関数くりこみ群では有効作用が重要な役割を果たす。作用が複素数値を取る場合、例えばθ項を含むような場合、有効作用が一意に存在するとは限らないことを示した。つまり、数値計算で現れる符号問題が、汎関数くりこみ群の枠組みでも問題となり得ることを示した。そして有効作用に非局所性を課さねばθ依存性を完全に再現できないことを、格子理論に基づき明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、極限環境下でクォーク物質が示す非平衡現象を、電磁場の角運動量という観点から研究することである。研究対象となる現象は、超高強度電磁場と相対論的渦度が織りなす協奏現象だけではなく、超高周波の電磁場の下で示す現象も含める。そして上記の現象の全てカイラルアノマリーは密接に関わっている。申請者はフロッケ理論に基づき、1+1次元系のカイラルアノマリーを詳細に分析した。またθ真空は円周上の量子力学だけはなく、クォークとグルーオンの理論である量子色力学にも現れる構造である。したがって汎関数くりこみ群の適用可能性を議論した経験は、クォーク物質物性の研究にも有用だと考える。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展している、と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
電磁場の角運動量を軸に、極限環境下のクォーク物質物性の探究を行う。 まず第一にクォークと電磁場の角運動量の間に成り立つ関係を明らかにする。そのためにカイラルアノマリーの関係式や角運動量保存則を用いる。カイラリティと磁気ヘリシティを結びつけるアノマリーの議論を拡張することで、クォークスピンと電磁場の角運動量の関係を見出すことができる。非物理的なゲージ場の成分を落としたチャーンサイモンズカレントを考えることで、アノマリー関係式を物理的なカレントの保存則だと捉えることができる。こうして得られたカレント保存則と角運動量保存則に基づき、クォークと電磁場間の角運動量輸送を研究する。 そして第二にカイラリティ生成や新たな輸送現象を探求する。申請者は昨年度、フロッケ理論に基づき、1+1次元系のカイラルアノマリーやカイラリティ生成の研究を行った。高周波極限ではカイラリティ生成によってアノマリー関係式が満たされ、有限質量効果が抑制されることを見出した。この研究で得られた知見を元に1+3次元系のカイラリティ生成を議論していく。更に磁場と渦度が共存する系のクォーク物質輸送現象を研究するために、申請者の先行研究の手法を拡張することも目指す。その手法の中では、クォークの軌道角運動量に由来する発散が現れてしまう。この発散を今まで考慮されて来なかった電磁場の角運動量を取り入れることで取り除くことを目指す。新たに得られた手法を用いることで、輸送現象や粒子生成を議論する。
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Research Products
(2 results)