2021 Fiscal Year Annual Research Report
技能実習生の日本語教育カリキュラムモデルの研究 -送出し、監理、受入れの観点から
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21J11417
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯田 朋子 筑波大学, 人文社会ビジネス科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 技能実習 / 外国人労働者 / 日本語教育 / カリキュラム / フィールドワーク / 技能実習生日本語教育 / 労働現場の日本語 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
技能実習生の日本語能力は、①技能実習現場(受け入れ企業)、②海外での日本語教育(送り出し機関)、③日本での日本語講習(監理団体)の3現場によって形作られると考える。そのため、本年度においては、まずは受け入れ企業において、実際の技能実習現場の実態および課題を明らかにするための調査を行った。具体的には、日本語母語話者と技能実習生の協働現場を対象とし、技能実習現場ではどのように日本語が使用され、日本語母語話者と技能実習生がコミュニケーションを取っているかを明らかにし、分析と考察を行った。 調査を行った多くの企業の中で、技能実習生のまとめ役や通訳、新人教育等を行うリーダーの存在が確認された。技能実習生が複数人存在する現場であれば、コミュニケーションを円滑に行う方策として、本研究で明らかになったリーダー制や、それを前提とした日本語母語話者とのコミュニケーションが行われやすいという可能性が示唆される。技能現場での調査からは、企業が行っているコミュニケーション戦略について明らかにした上で、課題についても明確化した。一つ目に、日本語母語話者と技能実習生の間に起こる不調和や不一致が存在した。二つ目は、技能実習生によって示される理解が確かなものでないという課題が見出された。三つ目は、日本語母語話者と技能実習生における「わかりやすさ」に差異があり、すれ違いが起こるという課題である。これらは現場での対応が困難な問題であり、技能実習生の日本語能力の向上や技能実習現場におけるコミュニケーションの円滑化のためには、講習における教育が最も重要な要素となると考える。技能実習現場で可能な日本語教育以上に、現場で求められるコミュニケーションを講習における教育に反映させる必要性があると結論づける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、本年度において、①技能実習現場(受け入れ企業)②海外での日本語教育(送り出し機関)、③日本での日本語講習(監理団体)の3現場それぞれの調査を行う予定であった。しかし、本研究はフィールドワークを中心とする研究形態からCOVID-19の影響を強く受け、出入国制限により海外での現地調査を行うことができなかった。オンライン調査に移行することも考えたが、出入国の厳しい制限のため技能実習生の移動が行われず、研究協力機関において日本語教育や講習自体が中止となったため、十分な調査を行うことが困難であった。そのため、当初の予定を変更し、COVID-19への対策に十分留意しつつ、既に日本に入国して技能実習を行っている①に焦点を当て、中心的に調査を行うこととした。そのため、①については充実した調査データを得るに至ったが、全体として見れば、当初の予定からやや遅れが出ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、COVID-19の動向に十分注意し、②海外での日本語教育(送り出し機関)、③日本での日本語講習(監理団体)について調査を行っていく。これに加えて、本年度に行った①技能実習現場(受け入れ企業)の調査結果を加味し、技能実習現場における実際の日本語コミュニケーションおよび、現在の技能実習生教育の過不足を明らかにする。その上で、技能実習生が受講を定められる講習において、現状の問題を解決するための日本語教育を探る。加えて、実験的なカリキュラム構築および教育実践に繋げ、現状の課題を解決可能な技能実習生教育を目指す。
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Research Products
(1 results)