2021 Fiscal Year Annual Research Report
The origin of iron and zinc in aerosols based on isotope fractionation process of metal elements during vaporization
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21J11420
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
名取 幸花 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | エアロゾル / 亜鉛同位体比 / 鉄同位体比 / XAFS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気エアロゾル中の人為燃焼起源鉄が低い同位体比を持つことに着目し、同じく燃焼を経ている火山起源鉄の化学種および同位体比の特徴を解明することを目的としている。また、地球表層での気化に伴う同位体分別現象については元素間の系統的な理解が進んでおらず、詳細な分別機構は未解明である。本研究では気化による同位体分別効果にその揮発性の違いが反映されるかを検証するため、エアロゾル試料および室内燃焼実験系を用いて、鉄と比較して揮発性の高い亜鉛についても同時に分析する。 本年度はそれぞれの目的に対応した課題として、大きく2点の研究を進めた。 1点目として、火山エアロゾル試料の鉄・亜鉛の化学種分析と同位体比の同定を実施した。前年度に阿蘇山火口付近で採取した粒径分画エアロゾルを用いて、X 線吸収端微細構 (XAFS) 法による化学種分析と多重検出器型ICPMS (MC-ICP-MS; Neptune plus) による同位体比分析を進め、人為起源試料の特徴と比較した。また、走査電子顕微鏡による粒子の観察や硫黄化学種分析も併せて実施した。 2点目として、室内燃焼実験を行った。この実験では、燃焼後の残渣の有無で同位体分別効果に差が表れるという仮説の下、ガソリン燃焼由来のエアロゾルと木炭燃焼由来のエアロゾルをそれぞれ採取した。採取した試料は鉄・亜鉛の化学種分析と同位体比測定に用いた。 今後は、大気からの沈降粒子を主成分とする土壌コアの分析と、発展課題として産業革命以前の大気の記録を保存するグリーンランドの氷床コアを分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要な実験課題であった室内燃焼実験を実施し、亜鉛の同位体分別機構について考察を深められた。実験は冬季と夏季の2回実施したが、1回目の実験から改善点を見出し、2回目の実験ではより良い結果を得ることができた。一方で、今年度終了までの実施を予定していた北海道樽前山での火山エアロゾルのサンプリングは、新型コロナウイルス感染症の影響により実現できなかった。そのため、火山試料については数が少なくなってしまったが、前年度に採取した阿蘇山試料を重点的に分析することで火山エアロゾルの特徴を明らかにすることができた。また、今年度は論文化を効率的に進めることができなかったため、来年度は執筆に力を入れる方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に採取した火山エアロゾル試料の分析を進めると共に、過去に採取された黄砂・砂漠砂試料やアイスコアの同位体比・化学種分析に着手し、エアロゾルの生成過程および起源推定についてより多角的な考察を試みる。それに関連して、本年度はより低濃度の亜鉛試料の同位体比分析を可能にする手法を開発する予定である。また、エアロゾルを主成分とした堆積物コア試料の分析にも着手する。前年度に引き続き、化学種分析の際の放射光施設への出張や学会への参加を予定している。これまでの研究成果は博士論文としてまとめるだけでなく、今年度中に学術雑誌に投稿する見込みである。
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Research Products
(2 results)