2021 Fiscal Year Annual Research Report
同級生に対する個別支援への他児童の捉え方とその変容過程
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21J11441
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古村 真帆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,小学校通常の学級における個別支援に対して,他児童はどのように捉えているのかを検討することを目的とする研究である。個別支援は対象児童にとっては必要なものであるが,通常の学級に在籍する他児童が個別支援を否定的に捉えていると,個別支援の実施は困難となる。そこで,他児童は個別支援をどのように捉えているのかを明らかにし,捉え方に影響を及ぼす要因を検討することは意義がある。2021年度は,2つの研究を実施した。 まず,実施した2つの研究について述べる。1つ目の研究では,児童の学級適応感と個別支援の捉え方との関連の検討を行った。具体的には,1年生~6年生の343名を対象に調査を行った。調査内容は,小学生用学級適応感尺度(江村・大久保,2012)および,仮想の個別支援が行われている4つの仮想授業場面課題であった。本研究により学年ごとの個別支援の捉え方の違いも検討することができ,今後の特別支援教育の実践へ有益な示唆を与えられると考えている。 2つ目の研究は,小学校教師を対象とした質問紙調査である。具体的には,小学校教師約200名を対象にWeb回答での質問紙調査を行った。主な質問内容は,個別支援の実施状況や個別支援を実施したときの周囲の児童の言動および児童らの仲間関係や学級適応感についてであった。幅広い年齢層や様々な勤務地の教員からデータを収集することができ,通常の学級における個別支援の実態を明らかにすることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について,おおむね順調に進展していると判断した理由は2つある。 1つ目は,当初の研究計画を含む2つの研究を実施することができた。1つ目の研究は,学級適応感と個別支援の捉え方との関連を検討した研究である。研究計画立案時は対象児童は90名の予定であったが,協力先の確保が十分でき,約350名の児童に協力をいただけた。対象児童を十分確保できたことで分析の幅も広げることができている。2つ目の研究は,小学校教師を対象とした質問紙調査である。これまでの報告者の研究は児童を対象に仮想の授業場面についてどう思うか調査したものであったが,実際の教育場面でみられる児童の言動についても調査し,仮想授業場面との比較検討を行うことを目的とした。研究計画立案時は,インタビュー調査によってデータ収集を行う予定であったが,多くのデータを収集する量的調査を実施し,その後にインタビュー調査で質的調査を行う方が,より本研究計画の実施目的に適した研究方法と判断し,質問紙調査を行った。 2つ目は,上記でも記したようにインタビュー調査を次年度に実施を残している。実施研究数を増やしたため,次年度は研究結果のまとめおよび研究の実施の両方をする必要がある。すべての研究を完了させ,本研究課題を達成できるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は次の通りである。まず,小学校教員15名にインタビュー調査を実施する。記録はICレコーダーで録音する。主な質問内容は「実施した個別支援と周囲の児童の反応」である。なお,研究開始前に,研究協力者に調査の説明をし,調査はいつでも止められることを伝え,心理的な負担にならないよう配慮をする。また,対面での面接実施の際には,COVID-19の感染予防対策に努める。得られた結果を取りまとめ,児童の個別支援の変容過程について仮説生成を行う。その成果を基に学会発表・論文投稿を行う。また,昨年度実施した研究結果についてもとりまとめ,学会発表・論文投稿を行う。 なお,COVID-19の影響により実験計画を一部変更する可能性がありうる。
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