2021 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring new physics via the multi-faceted examination of the lepton number violation
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21J11444
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 一輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | レプトン数保存の破れ / ニュートリノ質量 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はレプトン数の破れを伴うある1つの新物理模型に着目し、その現象論を研究した。この模型では新しく追加された右巻きニュートリノのマヨラナ質量によってレプトン数が破れており、これが量子効果を通じて、現在観測されているニュートリノの微小質量を生成する。また、この模型は拡張されたヒッグスポテンシャルを含んでおり、これによって暗黒物質、バリオン数非対称性の問題も同時に説明できる可能性がある。この模型は約10年前に提唱されたものであるが、模型におけるバリオン数生成について十分な研究は行われておらず、この模型が真にバリオン数非対称性を説明しうるかは未解明であった。また、この模型におけるバリオン数生成の物理と、ニュートリノ質量やレプトン数の破れ、暗黒物質の物理などとの相互関係についても明らかにされていないままであった。我々はこの模型を基に、現在までの様々な実験からの制限を満たすように拡張した新物理模型を構築した。具体的にはヒッグスポテンシャルにおけるソフトに破れた離散対称性を放棄し、より一般的な模型拡張した。これにより、ヒッグスポテンシャルと湯川セクターそれぞれにCP対称性を破る独立な位相が導入される為、実験からの制限を満たしつつバリオン数非対称を説明することができるようになる。この新物理模型におけるニュートリノ物理、暗黒物質の物理、レプトンフレーバーの物理、バリオン数生成の物理などを調べ上げ、実験的、理論的制限をすべて満たしつつニュートリノ質量、暗黒物質、バリオン数非対称性を全て同時に説明するベンチマークシナリオを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標はレプトン数保存の破れを伴う新物理について、模型の詳細によらない方法を用いた研究と具体的な模型を調べる研究の2つのアプローチを用いて調べ上げ、将来実験を用いてこのような新物理模型をどのように同定するかについてのロードマップを作成することである。本年度の研究において我々はレプトン数の破れを伴う具体的なある新物理模型を調べた。これによってある種の模型についての理解を深めたが、他の新物理模型の研究や、模型の詳細によらない方法を用いた研究についてはまだ遂行されていない。この為、進捗状況はやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではまず本年度に研究した模型の現象論について、ベンチマークシナリオの将来実験による検証なども含めてより詳細な研究を行う。これが完了次第、成果を論文にまとめる。その後、レプトン数を破る他の新物理模型の研究および模型の詳細によらない方法を用いた研究を進める。
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