2021 Fiscal Year Annual Research Report
The origin and cosmic time evolution of r-process elements and the event rate of supernovae, collapsars and neutron star mergers
Project/Area Number |
21J11453
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 雄太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 銀河化学進化 / 超新星爆発 / 連星中性子星合体 / コラプサー / 元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はrプロセスで生成される元素の進化を解明することで、宇宙に存在する元素の起源をあきらかにすることである。本年度の主な成果は以下の二つである。 1. 銀河化学進化計算の枠組みの整備:rプロセスで生成される元素について、銀河における平均的な進化を計算する枠組みの整備を行った。(Yamazaki, et al., 2022)従来から候補天体として議論されてきた超新星爆発や、重力波の検出以降非常に注目されている連星中性子星合体に加え、コラプサーからの寄与も銀河化学進化に含めた。連星中性子星合体の発生頻度については連星系の重力波放出による軌道進化を考慮し計算した。 2. 全ての元素合成過程を考慮した化学進化モデルの精緻化と観測による評価と制限:各元素合成過程はその過程ごとに特有な核種を生成する。rプロセスが発生するような爆発的な天体現象ではニュートリノが放出され、νpプロセスという元素合成過程も発生することが近年明らかになった。この過程は陽子過剰な核種(p核)を生成する。ニュートリノを考慮した最新の元素合成計算を利用し、銀河化学進化に組み込んだ。p核とrプロセスで生成される中性子過剰な核種(r核)を同時に計算し観測結果と比較することで、銀河化学進化モデルの精緻化を行った。(Sasaki, Yamazaki, et al., 2022)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画は、翌年度以降のより大きな銀河化学進化計算モデル構築のための準備と観測による評価から単純なモデルを精緻化することであった。 以上の計画は概ね順調に達成されている。 全ての元素合成過程を考慮し、銀河における平均的な元素存在量の時間進化を計算した。このモデルを拡張した、銀河内の元素存在量のばらつきをも考慮できる手法の実装にすでに着手しており、翌年度、より拡張したモデルの構築へとスムーズに移行できると考えている。 また、rプロセス対応天体で発生する別の元素合成過程であるνpプロセスを計算の組み込んだことで観測と比較できる核種が増え、モデルパラメータに対する制限をより得やすい環境が整った。 以上のことから、宇宙における元素の起源を解明するという目標に対し、翌年度以降の計画を順調に遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 階層的銀河形成モデルの実装:本年実装した銀河化学進化と階層的銀河形成モデルを組み合わせることで、各矮小銀河の化学進化がマージされていくモデルを実装する。これにより、銀河系の星々と直接比較・評価できる化学進化モデルが完成する。 2. 観測によるモデルの制限:銀河系全体の新しい化学進化モデルを観測と比較・評価し、r過程元素の進化を明らかにするとともに、次世代望遠鏡で観測すべき項目の提案も行う。 3. 天体現象の発生頻度への制限:中性子星連星合体の発生頻度は、現在では非常に大きな不定性が残っているが、近年の重力波望遠鏡の運用が進んでおり、観測件数は増加してきている。最新の観測結果を用いてモデルを評価しより良い制限を得るとともに、今後継続的に新しい観測結果を利用する枠組みを構築する。
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