2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J11586
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宗 周太郎 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 戦国秦漢 / 簡牘 / 流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナウイルスの流行により予定していた海外での調査は行えなかったため、予定を一部変更し、博士課程在籍中に進めてきた研究成果の整理を中心に行った。まず、岳麓秦簡の質に関する記述を中心に検討し、秦代の質がどのような行為であったのか、その語義について検討を行った(下記博士論文の第四章質字考の内容となる、以下の括弧内も同様)。この質の検討をもとに、秦漢期の動産管理がどのようなものであったかを考察した(第五章 戦国秦漢期の動産管理―秦漢律中に見える質行為を中心に―)。この二つの論考から、当時の商業流通がいかなるものであり、君主とどのような関係にあったか考察した(第六章 戦国秦漢期の商業流通―商業管理と君主―)。これに加えて、出土文字史料に見える交通に関する記述を道路・関所・市場の三つの観点から整理を行い、それらの地点における交通管理がいかなるものであったかの考察を行った(第一章 流通を管理する諸地点~道路~・第二章 流通を管理する諸地点~関所~)。 以上の内容と、これまでに執筆した論文二編を加え(第三章 流通を管理する諸地点~市~、補論 流通管理と国家管理機構~戦国斉の例から)、2021年12月、博士論文『戦国秦漢期における流通・交通管理制度の研究』として京都大学に提出、2022年3月23日に京都大学博士(文学)の学位を授与された。博士論文中には現在雑誌論文上で公刊されていないものもあるが、これらは今後順次投稿・公表していく予定である。 また、博士論文提出後、いくつかの研究発表、訳注作成を行った。商業流通考察の軸となっている質に関する発表①や、商品価格に関する平賈する発表②は、本研究課題中の商業流通の考察の成果の一部である。また、国際的な場で研究発表を行うことで、国内外に研究成果を示すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行により、当初予定していた海外調査の実施が不可能になってしまった点で、当初の予定とは異なる部分も生じたが、日本国内において これまでの研究を整理し、博士論文の形で研究成果をまとめることが出来た。また、二つの研究発表を行い、国内外に研究成果を発信できており、当初の予定と は異なるものの、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度博士論文で検討した内容を元に、昨年度実施することが出来なかった海外調査を含め、考古資料を実見する機会を作ることで、当時の流通がどのように行われていたか、器物の面からも調査を進めたい。特に昨年一年を通して、流通の物流面での調査検討の必要性を痛感したため、道路や関所といった物流の要衝でいかなる管理が行われていたかをより仔細に考察したい。
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