2021 Fiscal Year Annual Research Report
マルチステップ作用を特徴とする革新的アミロイドーシス治療薬の開発
Project/Area Number |
21J11627
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井上 雅理 熊本大学, 生命科学研究部 製剤設計学分野, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | デンドリマー / シクロデキストリン / shRNA / ポリプレックス / アルツハイマー病 / トランスサイレチン / アミロイドβ / アミロイドーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
カチオン性樹状高分子を用いて、環状糖を修飾したデンドリマー(CDE)を合成後、CDEとshort hairpin RNAを発現するプラスミドDNA(shRNA)との複合体(CDE/shRNA)を調製した。CDE/shRNAの臨床応用を目指すうえで、安全性および治療機構の解明は必須である。従って、当該年度では、調整したCDE/shRNAの安全性およびトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシス治療機構の解明を目的に検討した。 CDE/shRNAの体内動態について明らかにするため、健常ラットに蛍光ラベル化CDE/shRNAを尾静脈内に投与した。投与後6時間内に主要臓器を回収し、in vivoイメージング装置を用いて、蛍光ラベル化CDEの臓器移行性を観察した。その結果、投与6時間までにCDEが肺および肝臓、腎臓に移行する様子が観察された。次に、CDE/shRNAの安全性を明らかにするため、TTRアミロイドーシス病態モデルラットにCDE/shRNAを3カ月間、繰り返し投与し、ラット体重変化および血液生化学検査値を測定した。その結果、CDE/shRNA投与による顕著な体重変化は観察されなかった。また、CDE/shRNA投与後の肝機能および腎機能に関する検査値を測定した結果、いずれもコントロール群と同程度の値を示した。次に、CDE/shRNAの作用機序を解明するため、CDE/shRNAのアミロイド阻害効率を、CDE/shRNAの粒子径または電位でプロットした。その結果、電位とアミロイド阻害効率の相関係数は、粒子径との相関係数に比べて、高値を示した。そこで次に、基盤分子のCDEとTTRタンパク質との相互作用を等温滴定型熱量計により解析した結果、CDEは、TTRおよび血清アルブミンと、それぞれ同程度の解離定数を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画において、当該年度では、CDE/shRNAの体内動態および生物学的安全性評価、TTRに対する相互作用解析を予定しており、いずれも予定通りの検討を実施できたため、上述の進捗状況を選択した。 当初、体内動態解析において、TTRアミロイドーシス病態モデルラットにCDE/sRNAを尾静脈内投与し、本複合体の体内分布をHPLCにより検出することを目的にしていた。しかし、CDE/shRNAを高い相関係数で検出できなかったため、蛍光ラベル化剤をCDEに修飾し、蛍光イメージング装置にて検出した。その結果、投与6時間までにCDEが肺および肝臓、腎臓に移行する様子が観察された。また、生物学的安全性を見積もるため、予定したCD/shRNAのLD50を算出するに至らなかった一方で、CD/shRNAを反復投与後の体重変化の観察および血液生化学検査値の測定を実施した。その結果、CDE/shRNA投与による顕著な体重変化は観察されず、CDE/shRNA投与後の肝機能および腎機能に関して、異常値を検出しなかった。さらに、相互作用の解析において、TTRタンパク質およびアルブミンとの相互作用について、等温滴定型熱量計を用いて解析を実施した。その結果、CDEは、TTRおよび血清アルブミンと、それぞれ同程度の解離定数を示すことが明らかとなった。加えて、TTRとの相互作用について、水晶振動子マイクロバランスおよび円二色性スペクトルにて解析し、詳細な相互作用様式について検討を行えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
種々のアミロイドーシスの病態過程は、原因タンパク質が異なっても共通であること、また、どのアミロイドもβシートリッチな構造を特徴とすることから、TTRアミロイドーシス以外のアミロイドーシス疾患に対するCDE/shRNAの適応拡大に挑む。特に、2030 年には、家族性アルツハイマー病を含む認知症の患者は、世界で約7000万人以上になり、中でも、 アジア地域の患者数は約30%を占めると言われている。従って、アルツハイマー病に対するCDE/shRNAの有用性について、in vitro および家族性アルツハイマー病モデルを用いて検討する。具体的には、CDE/shRNAの1)マウス神経芽細胞腫におけるAβ産生酵素に対する発現抑制効果、2)ヒトAβ42に対するアミロイド阻害効果、3) 家族性アルツハイマー病モデルにおける脳内Aβ沈着阻害効果、について検討する。さらに、CDE/shRNAを家族性アルツハイマー病モデルに投与後の、病態モデルの認知機能について、Y字およびバーンズ迷路を用いて検討し、加えて、CDE/shRNA投与による安全性についても評価する。 さらに、種々のアミロイドーシス(インスリン、β-ミクログロブリン、アミロイドA)に対する本剤の阻害能に関して検討する。
|
Research Products
(7 results)